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Eternal White

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 今までの蓄えを放出し、早目早目の対応をしていたというのに――。
 暖炉の傍で、フォンビーレフェルト家からの書状を読んでいたヴォルフラムが溜息を吐く。
「なんか問題でもあったのか?」
 耳ざとく聞きつけたユーリが、紅茶の入ったカップを手に近づいて来ると、ひとつを差し出す。
 ありがとうと受け取ると、見るかと片手にある書面を揺らす。だが、ユーリは向かいの椅子に座って首を振った。
「おれが読めるはずないじゃん」
「……まったく。こちらに来るようになって何年経ったと思っているんだ」
 ユーリが魔王になって、もう5年は過ぎようとしている。昔に比べれば不便はなくなってきたとはいえ、ユーリは今だ読み書きは危うい。貴族語ともなると、指で辿るのは別として、見ただけではさっぱりらしい。
「それに、お前の叔父さんの字って達筆すぎるんだよ」
「そうか? 美しい筆だと思うが……」
 ひらりと細く几帳面な文字が並ぶ便箋をひらひらと振りながら、とにかく読んでみろと押し付ける。仕方なく受け取ってはみるものの、ちらりと見ただけで無理だと根を上げる。
 だが、そんなユーリを見るヴォルフラムの目はいつになく憂いを帯びていて、らしくなさに手を伸ばす。
「よくない知らせか?」
「ああ。この厳冬で、ビーレフェルト地方もかなりやられているのは知っているだろう?」
 素直に頬を撫でられながら、手紙を返してもらうと蝋封が残る封筒へと戻す。無造作に机の上、手をつけなかったカップの隣に置くと、ヴォルフラムは立ち上がる。
 そのまま覆い被さるように抱きついてくる婚約者を受け止めながら、また頬を撫でてやる。抱きついてくる行為自体は珍しくはないが、今日の彼はどこかおかしい。よほど、手紙の内容が厳しいものだったのだろう。
「うん。お前も随分と夜遅くまで仕事してたもんな」
「……それなのだが、向こうで手が足りなくなったと言ってきた。暫く、あちらに戻らなくてはならない」
「そっか……」
 色々と手助けしてやりたいと思っても、王はどっしり王都で構えていろと言われて動けない。どこもかしこも大変だから、ひとつの場所に王が出向いてしまっては、王がこない場所の民が不安がる。いわゆる、えこひいきだって、そう言われるのも分かる。でも、こうして血盟城から誰かが自分の名代として外に出て行くたびに胸の奥に溜まる、苦い思い。
「ユーリは駄目だぞ」
作品名:Eternal White 作家名:架白ぐら