Eternal White
それを察してか、ヴォルフラムは念を押す。
「……分かってるよ」
自然と零れる溜息に、白い手が髪を掻き混ぜる。
「拗ねるな、ユーリ。ぼくも向こうの用を済ませたら、すぐに戻ってくる」
「拗ねてなんかないっつーの。お前も気をつけて行けよな。ただでさえ、寒いの苦手なくせに」
「ユーリほどではないだろうっ!」
年を重ねて男らしくなった反面、こういう子供っぽさは相変らずの愛しい相手は、ちょっとだけ頬を膨らませたかと思うとくすりと笑った。こっちを向けと人の髪を掻き混ぜていた指が促す。素直に従えば、すぐに唇が降って来る。
「――ぼくがいない間、浮気はするなよ?」
「お前な。おれが何時どこで浮気したって言うんだ」
もはや尻軽とか浮気者はただの常套句。するりと腕の中からヴォルフラムが離れていく。
「ユーリは信用がならない」
「お前なぁ」
後を追うように立ち上がり、軽く脇腹を突いてやる。もちろん、お互い冗談……もしかしたらヴォルフラムは本気かもしれないけれど、そのまま互いの顔を見て笑い出す。
「ぼくは兄上たちと今後を相談してくる」
「おれも一緒に行くよ。話くらいは、知っておきたいからさ」
だからこれ以上の文句は言うなよと、無言のお願い。行こうと促せば、フンと鼻が鳴らされる。
部屋を出ても随時こんな調子なので、城内の人々の目はいつまでも初々しいふたりには優しい。
案の定、グウェンダルもヴォルフラムと同じような顔で同じことを言う。
それにユーリは両手を上げて絶対の味方へ支援を要請してみれば、珍しく名付親も兄と弟と同じような顔をしていた。
「本当に、行っちゃ駄目ですよ。陛下には前科があるから」
「前科ってなんだよ」
「お前は、ヴォルフラムを追いかけてビーレフェルト城へ行ったことがあるだろうが。しかも決闘騒ぎまで起こしたことを、忘れるな」
「………いや、あの時と今は事情が違うし」
かれこれ何年も前の話を持ち出され、しかもあの時は婚約解消で内乱の危機まで抱えていたという事情もあるのに、その辺は酌んでもらえないらしい。
もちろん、今の心境を語れば今すぐ城を飛び出して、みんなの手伝いにまわりたいけど。
せめてもの反抗の意思表示とばかりに唇を尖らせれば、節くれだった指先が黒髪に突っ込まれた。
「拗ねないでください、陛下。みんなあなたのことが心配なだけです」
作品名:Eternal White 作家名:架白ぐら