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Eternal White

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 ドサリと重い音が近くで響く。ヒッと喉を鳴らして、思わずあとずさる。
 もう楽しい気配はどこにもない。
 今はただ、真っ黒な闇が怖くて仕方なかった。
 ――たしかあの時は、泣いて眠っていたところを兵士たちに見つけられ、心配顔のコンラートからお小言を聞かされながら、城に戻ったはず……。
 懐かしい記憶に、ふと笑みが零れる。
 どうてし、突然こんなことを思い出したのだろう。そう、雪が白くて、とても綺麗だから……かもしれない。
 見渡す限りの白銀の世界。ユーリも一緒に連れて来てやれば良かった。もっとも、ユーリは雪はあまり好きじゃないけど。
 いつか、ふたりで遠乗りに出かけたとき、彼は早々に城に戻ろうといった。後で聞いたら、白すぎて怖かったと恥ずかしそうに告白した。
 荘厳な白は、確かに近寄りがたく、だからこそ美しい。それが分からないなんて、ユーリもまだまだ子供だな。そう笑った僕だが、でもユーリがあの大地に苦手としたのは少しばかり理解できる。
 彼には、あまりに不似合いなんだ。
 ユーリに似合うのは青空であり、温かな世界。凍てつく寒さに包まれた気高い白は、やはり少し違う。
「ヴォルフラムは、白が似合うよ」
 そんなことを確か、言ってくれた気がする。それは、遠乗りから帰ってきた後だったか、前だったか。
 眠いように鈍る思考が、思い出を掻き消してゆく。
 でも、とても気持ちがいい。白い世界に包まれて、とてもとても、幸せな気分だった。

「―――って、えっ!?」
 慌てて飛び起きると、身体の上に積もった雪の塊が音を立てて落ちる。すぐに押し付けられた鼻面の温かさに、一体何事かと戸惑う思考。
 見渡せば、真っ白な世界。傍には愛馬が鼻を鳴らして、雪原に埋もれる主人を呼んでいる。
 雪を払いながら身体を起こせば、ずきりと鈍い痛みが全身を襲う。たまらず両肩を抱きうめくと、また温かな鼻面が心配げに触れた。
「……ああ、確か……皆は…」
 痛みをやり過ごし、大丈夫と鼻を撫でる。周囲には、この愛馬以外の気配はない。
 深々と降り続ける雪はいまだに視界を遮るが、少し前までの、あの息もつげぬほどの吹雪は収まっている。一瞬で気候が変わったのか、それとも。
「おい、レーヴェ。他の者はどうした?」
 ひたすら主人を心配し続けている白馬に問いかけても、答えが帰ってくるはずもない。
作品名:Eternal White 作家名:架白ぐら