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こわれもの(サンプル)

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「おい」
 親しい知人から‥ならともかく、突然後方から赤の他人に呼び止められて振り向く人は少ないだろう。特にガラの悪そうな声なら尚更だ。
「おいっ!そこの坊主」
「‥僕ですか?」
 白々しいとは思いながらも、帝人は自分を指差しながら呼び掛けられた方向へと振り向いた。そこには赤青黄色、色違いのTシャツを着たチンピラ風の男達が立っている。
 帝人は最初男達の揃いのTシャツに信号機を連想し、噴出しそうになったが、男達の顔に貼り付いている下卑た笑いに気付き、背筋を伸ばした。
「そうだよお前だよ」
「‥なんですか?」
「お兄さん達、今お金に困ってんだよね」
 帝人は愛想笑いを続けながら、あまりにテンプレ的なカツアゲの常套句に呆れ、「はぁ」と間の抜けた声を出した。
「そこでだ、お兄さん達にお小遣いくれねぇ?」
「‥すいません、今お金持ってないので」
「そんなわけねぇだろ。すかしてんじゃねぇぞこの野郎」
「いや、本当に持ってないんですよ」
 黄色の男と押し問答を続けていると、いつの間にか青色の男が帝人の後ろに回り込んでいた。男はバッグを強引に取り上げると、手慣れた手付きで中から財布を取り出し、用済みになった空のバッグを帝人に向って放り投げた。
「財布ゲット~」
「さて、御開帳」
 嬉々とした様子で取り上げた財布を広げた三人組だったが、財布の中身を覗き込んだ瞬間、全員から憐れんだような声が漏れた。
「…こいつ小銭しか持ってねぇぞ」
「だから言ってるじゃないですか。お金持ってないって」
「ふざけてんじゃねぇ!!ブッ殺すぞ」
「うわっ」
 男達は理不尽な怒りを罵声に変えて詰め寄り、帝人の右肩を思い切り突き飛ばした。そのまま舗装された地面に叩き付けられると思った帝人は体育で習った柔道の受け身を思い出し、衝撃に備え身構える。

―――……あれ?

 しかし、予想した衝撃は一向に訪れない。それどころか大きく暖かい何かが帝人の背中を支えているようだ。
「おい、大丈夫か?」
 聞き覚えのある低音に帝人が恐る恐る瞼を開くと、池袋最強と恐れられるバーテン服の男、平和島静雄が自分を支えているようだった。
「しっ‥静雄さん!?」
「んっ?お前‥この前も会ったよな」
 帝人がゆっくりと頷く。すると静雄は「あ~名前‥なんだったか」と呟きながらサングラスを外し、まじまじと帝人の顔を覗き込み始めた。
「なんだこいつ?」
「あんだぁ。このバーテン、おめーの知り合いか?」
「なぁ、お兄さん。お金持ってねぇ?この餓鬼じゃ話になんなくてさ」
 チンピラ風の男達は静雄の着ているバーテン服を物珍しそうに眺めながらも、カツアゲの標的を文無しの少年から突如現れた金髪のバーテンダーへ移したようだ。
―――この人達、静雄さんを知らないんだ。‥という事は少なくとも池袋の人じゃないのかな?
作品名:こわれもの(サンプル) 作家名:伊達