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こわれもの(サンプル)

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 帝人は残念そうに眉を下げると、チンピラ達が地獄への階段を転がり落ちていく様子を他人事のように眺め始めていた。そして予想通り、数秒後に言い寄る男達に静雄が苛立ち始め、低く唸りながら一番近くにいた赤いTシャツの男の顔面を鷲掴んだ。
「‥うるせぇ」
「あがががああ」
「うるせえって言ってんだろうがあああああああああああ」
 静雄は男をまるで野球ボールを投げる様に、道路に向って勢い良く放り投げる。投げ飛ばされた男は、茫然としている仲間の頭上を越え、悲鳴を上げながら道路を挟んだアニメショップの看板に突き刺さった。
「で?まだやんのか」
「ひっ‥」
「うわああああああ」
 静雄が男達に向って振り返ると、呆けていた男達は金縛りが解けたように悲鳴を上げて公園から逃げ出していった。

―――‥凄いなぁ、静雄さん

「おい、怪我ないか?」
「あっ‥はい」
 久方ぶりの非日常な光景の連続に目を奪われ、立ち尽くしていた帝人は突然振り返った静雄に驚いたが、盗られた物が無いか確認すると笑顔で頭を下げた。
「大丈夫です。助けてくださって有り難う御座いました」
 その姿を見て、静雄は帝人を指差しながら「思い出した」と呟く。
「あ~、確か竜ヶ峰‥だよな」
「はい、竜ヶ峰帝人です」
「お~、芸能人みたいな名前だな。てか、静雄の知り合い?」
 いつの間にか帝人の後ろに立っていたドレッドヘアの男が会話に加わる。すると静雄は「‥俺のって言うか、セルティの知り合いっすね」と首を捻りながら答えた。
「へぇ、黒バイクの‥」
 ドレッドヘアの男は何か思い付いたように呟くと「静雄の上司の田中だ。トムって呼んでくれ」と帝人に向って自己紹介をした。
「なあ、竜ヶ峰」
「えっ?はい、うわぁ」
 真剣な表情の静雄に帝人は驚いて返事を返す。すると静雄は片手で帝人の下げていたバッグを掴み、そのまま帝人ごと持ち上げた。
「やっぱり‥お前、軽すぎるぞ。本当に高校生か?」
「‥静雄、お前が持ち上げたんじゃあ誰でも軽い部類に入っちまうだろ。でもまあ、それは置いといても兄ちゃん顔色悪いぜ、育ち盛りなんだからちゃんと食わねぇともたねぇぞ」
 ぐったりと釣りあげられている帝人の顔をトムが覗き込む。その顔色は青白く、深窓の令嬢のようで、インドア派の静雄と比べても到底健康的と呼べる顔色では無かった。
「いえ、ちょっと‥金欠で、でも明後日バイト代が入るんで大丈夫です」
 笑顔で答える帝人に、静雄が「今いくらくらい持ってんだ?」と尋ねる。すると帝人は明らかに狼狽し、観念したかのように肩を落とすと、蚊の鳴くような声で「‥三百七十三円です」と答えた。
「…給料日前の静雄よりひでぇな」
「…そうっすね」
 トムは何か考え込むように唸ると、帝人に向って「‥なぁ、今日バイトしねぇ?」と問い掛けた。
「バイト‥ですか」
作品名:こわれもの(サンプル) 作家名:伊達