王子様とゲーム。
「というわけで、第1回ETU王様ゲーム!」
じゃじゃん、と口で合いの手を入れ達海がくるりと輪になったメンツを見遣り、叫ぶ。
そのいかにも楽しそうな横顔を椿は どうして……、となんとも言えない気持ちで見つめた。その手の中には、達海の命令で作った即席の籤が握られている。
「つーか、なんで俺たちまで付き合わないといけねぇんスか?」
「ええ? だって、ジーノと夏木だけ仲良しってさみしいだろ?」
なんで、という気持ちは誰もが同じなのだろう。赤崎が冷めた表情で問えば、負けじと達海も笑顔のまま問い返す。
「別に、どうでもいいッスよ」
「良くないだろー? だって、考えてもみろよ。このまま、ジーノと夏木がどんどん仲良くなれば、ジーノのボール、みんな夏木に行っちゃうかもだぜ? そうしたら、夏木が今年の得点王になるかもなあ……」
「そりゃ、嫌ッス!」
それはないだろう、流石に椿が緩く首を振ったところで、世良が勢い良く叫んだ。驚いて見れば、世良はぎらぎらとした眼差しで達海を見つめている。
「だろだろ? こんな暑苦しいのが得点王だなんて、嫌だよなあ」
世良の言葉に芝居掛かった仕草で達海はうんうんと頷いた。彼方で ぬおお、と夏木の奇声が響く。
達海がちらりと視線を浮かせ周囲を見回し、ひたりと正面に視線を据えた。そして再びにっと口の端を捲り上げる。
「DFとか、自分は関係ねェって思ってるかもだけど」
ぽつりと呟かれた言葉に、明らかに白々とした表情の杉江が狼狽える。その様子に、ニヒヒ…と達海が声を上げた。悪童染みた凶悪な笑みが浮かぶ。
こう言うときの監督って、トンデモないこと言うんだよな。自他共に認める臆病者な椿はぞくりと背筋を震わせる。
「そうじゃなくてもさあ、今日は無礼講だよ? 王様命令でアイツとかアイツに好き勝手言えるんだぜ? 後藤とか村越とか……もちろん、俺にも、な」
ゆったりと続けられた言葉に、世良同様単純な黒田が 俺はやるぞ! と叫んだ。