セオリー(短編集)
わたしには女神がいる
※マリみてパロです
お姉さまが仕事をこなしているのを見るのが好きだ。正確に言うと安心する。といってもお姉さまがサボり魔かというとそうでもない。ただ放っておけばふらふらと何をしでかすのかが分からないだけであって、自分から積極的に逃げることはしない。要するにUFO研に近寄らせなければいい。お姉さまが紅薔薇さまとなってからはじめてした仕事がUFO研究会の承認だった。それ以来UFO研はお姉さまのファンクラブかハーレムかという体たらくを呈している。しかも肝心のお姉さまはそれに気付いてないと来ている。どこまで鈍いんだと心の中で悪態を吐きつつもどこか安心している自分は間違いなく存在している。お姉さまにはじめて会ったときのことは今でも忘れられない。女神のように見えたものだとは本人には絶対に言わない。同じ女の私でさえはっとする程整った顔をしているお姉さまが髪を掻き上げる。伏せられた睫毛は羨ましいくらい豊かなものだ。それなのにどこか可愛らしくてなまめかしくて美しい私のお姉さま。ファンになるのもよく分かる、とは思っても、やはり本人には絶対言わない。
「葉月ー、手が止まってるー」
恨めしそうな声には、いつも通りの返事しかしなかったけれど。