セオリー(短編集)
奇をてらった愛情表現に価値はない
「給料3ヵ月分の指輪っていらないよね」
「なんでですか」
「計画性なさすぎじゃない?そんなに婚約指輪に使って結婚指輪はどうするつもりなんだろう」
「さあ」
「どうするのかなぁ……使い回したりするのかなぁ」
「それはそれでやですね」
「だよね。フラれた暁には悲劇だ」
「指輪は返してくれなかったりして」
「うわ!うわ葉月ちゃん今の見た?!これ最終話なのに本当に婚約者捨てたよこの女!!」
「最終話だからだと思う。ていうか武藤さん興奮し過ぎ」
「うぅう……」
「あ、これはちょっとすごいかも。ほら武藤さん、バス追いかけてますよ。いかにもドラマ!って感じ」
「………………」
「………………」
「……葉月ちゃん、ちゅーしょっか」
「はぁ?!」
「なんか、ね。私たちは普通でいっか、って思って。ドラマティックな展開とか、あんまりいらないよね?」
「それでどうしてちゅーに辿り着くのか私にはもう全く分かりませんよ」