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【コナン*パラレル】 夏の暑さは、 【快新】

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快斗が工藤新一に出会ったのは、丁度一歳になった日。

両親に連れられ工藤邸の門を潜り、そこで快斗はまるで双子のような新一に出会った。
おぼろげな記憶の中、彼の姿だけが鮮明に思い浮かぶ。
それは後に見たアルバムで補完された映像なのかもしれない。
けれど快斗にとって彼に出会ったその衝撃だけは忘れようも無い現実だった。


幼い頃の快斗と新一は、白い肌も、小さな唇も、意志の強そうな眉も、
全てが鏡のように似ていた。
成長するにつれ体格やそれぞれの持つ雰囲気、表情でそれほど似ているとは
思われないが、当時は違っているところと言えば瞳の色と髪質程度しかなかった。

光を受けると深い夜の闇を映す紫の瞳をもつ快斗に対し、
新一は真昼の空のように澄んだ青を持つ。
そして柔らかな癖毛でふわふわとまとまりの無い黒髪の快斗に対し、
新一はまるで絹糸のように真っ直ぐで艶やかな黒髪を持っていた。

見た目だけではなく足りないものを補い合っているような二人は
いつしか本当の双子のように何をするにも傍らに居るようになった。

「快斗と新一君は本当に仲がいいな」

感心するような父親に、何の衒いも無く、むしろ誇らしげに好意を告げる。
読んでいた本から二人同時に顔を上げ舌っ足らずだけれどしっかりとした口調で
何度も繰り返した。

「えへへ~。ぼく、しんちゃんだいすきだもん」

ね~、と同意を求め父親から新一へと顔を向けると、勿論だと満面の笑みを
浮かべていると思っていた相手は、何故かむっつりと黙り込んでいた。

何か怒らせてしまったのだろうか、おろおろと様子を窺っていたが
ぼそりと呟かれた一言にきょとんと目を丸くした。

「…ちがうもん」
「しんちゃん?」
「ぼくのほうがかいちゃんのことすきだよ?」

くい、と裾をつかまれ睨みつけられながら言われたその言葉に不安は消え
温かな何かが胸を満たすのがわかった。
けれど新一の言葉は嬉しくて堪らなかったはずなのに、口に出たのは幼い競争心で、
挑発するような言葉だった。
それを敏感に感じ取った新一と、本格的な喧嘩になるまで数分も掛からない。

「…えー、ぜったいぼくのほうがすきだよ」
「ぼくだもん!」
「ぼく!」
「ぜったいぼく!」

二人は大人たちが驚くほど仲がよかったが、同時に負けず嫌いで
一度意見が違えばどちらも一歩も引かずよく殴り合いの喧嘩にまで発展した。
そんなとき両親はただ微笑みながら見守るだけで、二人が疲れて眠ってしまうまで
ただ放っておく。
流石に道具を持ち出せば喧嘩両成敗とばかりに二人に拳骨をお見舞いするが、
自分の身体だけを使うのならば好きなだけやらせた。

動物が兄弟間の遊びで狩りや様々なことを学ぶように、快斗と新一も
お互いの身体を使って力加減を学び、競うことで己を高めることを学んだ。

そうやって、幼い頃はただ楽しく過ごした。

笑って、

笑って、


笑って…




愛情に満たされて、純粋に、ただ家族のような優しい好意だと、そう思っていたのに。

それは間違いだったのだと、唐突に突きつけられた。