二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【コナン*パラレル】 夏の暑さは、 【快新】

INDEX|4ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 






目が覚めて、快斗はなんの違和感も無く、ごく自然に
自らの感情に恋愛と言う名を与えた。
特に自覚は無かっただけで、過去の行動を省みれば親友に対する感情にしては
いきすぎだったとわかったからだ。
何より、どれ程否定しても身体の反応が全てを語っていた。



彼が、欲しい。


女の代わりではなく、ただ、彼が欲しい。

けれど、それよりも。
欲しいという欲よりも、彼が離れていくことが怖い。

幼い頃より優秀すぎる頭脳と、運動神経を持ち、無駄な度胸と
鍛えられたポーカーフェイスで何も恐れたことなどなかったけれど。

快斗は新一が自分から離れていくと想像しただけで震えが止まらない。
こんな恐怖など初めて知った。
父親が死んだときでさえ、これほどの恐怖を感じなかったのに。

(ああ…あの時は新一が慰めてくれたんだっけ)

恐怖など感じなかったけれど、己の世界の規範だった父親を失った衝撃で
快斗は一時声を失った。
泣くことも叫ぶことも出来ず、己が悲しんでいると言うことさえも気付けず、
笑う事しかできなかった快斗に手を差し伸べたのは新一。
泣くことを、失う悲しみを教えてくれたのは、幼い新一だったのに。

(失えるわけが無い…あの手を、失うくらいなら俺はもう笑うことも出来ない)

感情に蓋をして、欲望を隠して、名を与えるだけで満足しよう。
これ程までに求める人に出会えた、その奇跡だけで生きていける。

そう、それだけで良かったのに。

「……自制心のなさは誰譲りだろ」

己の記憶が正しければ父も母も、それほど欲望に忠実だったとは思えない。
寧ろ自制し、己よりも他を大切にする人だった気がする。


誓ったはずの沈黙が存外難しいことがわかって、離れようと決めたのは、
進路が現実的な問題になった頃。
同時にそれは、衝動を抑えきれなくなった頃だ。

家が近所の上、父親が他界したとはいえ父親同士だけでなく
母親同士もまた友人だったという状況では学校を別にしても必然的に会うことが多い。

何より、普段他人とは一線を引いているくせに、新一は一度懐に入れた人間の前では
酷く無防備だ。
男同士で無防備も何も無いのだが、無邪気に触れてくる熱に
何度負けそうになったことか。
このまま無防備なその身体を前にして理性を保てるだろうか?
そう自問すれば即座に浮ぶ否定。

(無理無理ぜってー無理)

いっそ快斗が情事に無知であったなら、もしかしたら耐えられたかもしれない。
けれど既にあの熱と快楽を覚え、雄としての欲望を持つ今、
目の前に差し出されたご馳走を我慢することは出来ない。

(だってなぁ…俺、新一のことぐちゃぐちゃにしたいもん。
あんあん喘がせて、俺の物って縛り付けて、
俺の出したものでお腹ん中、一杯にしたいもん)

危険信号が、頭の中でずっと点滅している。
全て壊してでも手に入れたい衝動と、
こんな想いに蓋をしてずっとこの温かな関係を守りたいと言う願いが、
ぐるぐると快斗の中で浮んでは消え、浮んではまた消える。

凶暴とも言える思考と、目の前でぐっすりと眠っている新一の穏やかな寝顔が
滑稽なほど似合わない。

日に焼けた彼は、一欠けらも女性らしさも感じられないのに、
何故か快斗には彼の構成する全てがうつくしく映るのだ。

「新一―…んなとこで寝てると風邪ひくよ」

リビングのソファで眠っていた新一は制服のままで、
帰宅後そのまま落ちたのだろうとわかる。

母親の命令で食事に誘うために来たのだが、何度声をかけても起きそうに無い。
一度触れたら我慢できる自信もないから、触れられないままもう一度名前を呼んだ。

「しんいち」
「……んん」
「しんいち…」
「……む、ぅ」
「おきて…じゃないと、襲っちゃう、よ…?」

すうすうと健康的な寝息をたてている少年の横で出す声じゃないな、と自嘲する。
甘く掠れたその声は明らかに情欲に濡れていた。

(あー…危険思想。もう、限界だなぁ)

「ごめん、ね…?」

最後だから、と心の中で言い訳しながら快斗はたった一度、
ほんの少しだけ理性を手放した。

うっすらと開いた柔らかな唇を指でなぞる。
くすぐったさからか、口をつぐんだ隙に触れるだけの口付けを落とし、
そのやわらかな感触と体温を感じて背筋を震わせた。

そうして、一瞬だけ触れた熱を無理矢理意識から遠ざけて、
今度こそ新一を起こすために肩をゆすった。

「新一」
「んー? かいと?」

(かわいい…舌、まわってない)

寝起きのぼんやりとした視線から慌てて逃げ、赤くなる頬を隠す。


幼い頃につないだ手の温もりとは全く違う、一瞬だけの熱に涙が出そうだった。







その夜、快斗は母親に家を出ると告げた。