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【コナン*パラレル】 夏の暑さは、 【快新】

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己の理性に限界を感じた快斗が選んだのがこの御堂学園。
主に良家の子息を対象に幼稚園から大学まで一貫した教育システムを誇る。
数年前までは男子校だったが、明治二十八年創立以来、動乱の大正、昭和初期を経て
学園は全寮制を廃止し、男子校から共学へと変化した。

しかし現在でも地方の学生のために寮は存在し、また山奥という立地にも拘らず
バスや電車などの交通は良く、名門としてのブランドがもたらす栄光も
衰えていないことから入学希望者が後を絶たない。

初等部からの持ち上がりが大半を占めているが、
中学から始まる外部生受け入れは三割を超え、大学に至ればおよそ半々の割合となり
マイノリティの居心地の悪さはない。


何より快斗が気に入ったのは定期テストで上位三位以内を一年間保持していれば
その年の学費全額返還と言う得点だ。

更に高校三年間首位で居続ければ御堂学園大学部進学を条件に
三年間の寮費と同等金額が付与される。
最も、御堂学園において学年上位はそのまま全国の順位を表し、
過去この恩恵を受けられた学生は片手で余るほどしかいない。
しかし快斗は「実質かかるのは教材費だけじゃん」と当り前のように
首位を取り続けるつもりで即決した。

その後の進路相談でも同様な説明をし、担任に告げればその自信に満ちた言い草と
態度に呆れはしたが、概ね快斗と同意見だった。
あとはただその生活態度を少し改めろと言った忠告だけで進路指導は終わる。

母親もそうだったが、なぜ快斗が家を出ると言う決断をしたのかは
特に問われることは無かった。
教師から見ればふざけた知能指数を持つ快斗が馬鹿みたいに高い偏差値の学校へ
進学したとしても、喜びはするが問いただす意味は無い。
寧ろへたに突っ込み快斗が意思を変えたら事だとでも言うことか。

(母さんはなんか気付いたのかな…)

家を出る、と告げたとき。

「決めたの?」

ただそう一言確認して、しっかりと頷けばあとはそう、と返された。
何か言いたそうな母親の顔をそれ以上見ていたくなくて、
快斗はそそくさと自室に逃げ込んだ。
母親の勘か、女の勘か、わからないが何もかも見透かされているような気がする。

面談の残り時間は無駄話と軽い小言で消化され、
最後に思いついたように口止めを頼んだ。
そんな有名校に入るなんてバレたら周囲の人間に茶化されるから、と。

「あのなぁ…いくらなんでも言わないよ。それより知ってるか?
実は他にもいるんだよ、御堂行くヤツ」
「言った端からアンタ洩らそうとしてんじゃんか…」
「おお!」

今気が付いた、とからからと楽しそうに笑う教師には悪いが、疑わしいことこの上ない。
滑り止めとは名ばかりのダミー受験用の高校も、一応用意したが、後はどう誤魔化すか。

(御堂ってことは…青子か? それか白馬かな。あそこ薬学と経営強いしなぁ)

一般的公立中学で、御堂学園に進めるレベルの知識を持つ人間はごく限られている。
快斗は勿論、新一、同じく幼馴染の中森青子、さらに転校してきた白馬探あたりだろう。
もう一人の幼馴染の少女、毛利蘭は学力的に少し劣り、
さらに彼女は家を出たがらないだろうとわかっている。

(新一は、蘭ちゃんと一緒だろうし)

「せんせ、じゃ頼んだよ?」
「黒羽も本番で寝るなよ?」

あはは、と笑顔で返し教室をでる。
あとは、友人達との会話でもその手の話は合えて登らせないように意識すれば
誰にも知られずに事は終わる。
そして快斗はようやく彼と離れることができるのだ。


そして数ヶ月が何事もなく、快斗の目論見通り過ぎて、入試が終わり、
当然のように主席合格となり、三月。


卒業式の日、会話に出さないことを意識するあまり
彼の進路も知ろうとしなかった自分の甘さに辟易した。




型通りの卒業式が終わり、女の子の集団を漸く巻いて岐路に着く。
最後だから、と油断していたのかもしれない。
うつくしい青空の下、綺麗な白い滑らかな肌を一歩後ろからじっと見つめていた。

「卒業しちゃったねぇ」
「そうだな」
「蘭ちゃん泣いてたね」
「青子ちゃんもな」

幼馴染の少女達がくしゃくしゃに顔をゆがめて恩師や後輩、友人と
別れを告げていたのを思い出す。
この日ばかりは彼女達の父親も感慨深そうに離れた場所で一服していた。

「さびしーもんねぇ」
「寂しいか?」
「そりゃ、もう今までみたいには会えないし」

新一とも、もう会うことは無い。
少なくとも、この恋心を押さえ込めるくらいにはならないとあわす顔が無い。

「ところで新一ってば全然寂しそうじゃないね?」

(寂しくない? 新一は、俺と離れて寂しくないの?)

言えない、言う資格も無いその一言を隠して、問いかける。
彼の意地っ張りな性格ならば、当り前だ、と返してくるだろうと予想していたのに。
困ったように頬をかきながら、新一はくるりと振り返った。

「つってもなぁ…お前とは四月からも一緒の学校だし卒業っつっても実感ねーよ」

そう、彼は快斗の好きで好きでたまらない、からりとした笑顔で言った。