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かなや@金谷
かなや@金谷
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無薬旅行(いらずとび)【池袋大戦発行】

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 臨也は自分では気にしていないつもりだったが、どうしても年齢に対しては反応が早くなってしまう。高校生から見れば自分は確かにオヤジなのかもしれないが、それを指摘され受け入れることには抵抗があった。
 その時の青葉への挑発的な表情は、臨也には忘れがたいものだった。
「それにしても、どうしてそんなに拘るんだい?」
「なんのことですか?」
 臨也の問い掛けに判らないと言いたげに帝人は首を傾げてる。臨也にしてみれば、帝人が性行為に拘る理由が判らないでいる。恋人同士だと言うことにはなっているが、臨也はそのことに確証を抱いているわけではなかった。
 そうなるようには仕向けては来たが、帝人の性格を考えればその方が継ごうが良いだけであって好意よりは、打算なのではと思うことがある。
 それに、このマニュアル行動も拍車掛けて臨也の判断を狂わせている。そして、その狂わせるということが、最も臨也を昂ぶらせる。
「俺に抱かれることだよ」
 もし純粋に好意の上であるならば、彼が臨也に抱かれたがるのは自然の摂理だ。だが、帝人の口調や態度からはまったくと言って良いほどの性欲を、欲求を感じないのだ。その欲望のままの行動であれば、臨也もこれほど警戒はしないが、その逆であるからこそ怪訝に思い出方を考えているのだ。
「あっ、だっておつきあいしているのだから当然かと思って」
 当然と彼は言うのだ。その帝人の言葉には感情や衝動というモノを感じない、無いと言っても過言ではないはずだ。
「そういうものかな?」
「じゃあ、逆にどうして臨也さんは積極的ではないんですか?」
 理解しがたい帝人の行動に首を傾げれば、今度は帝人の方から問い掛けられた。何故、自分を抱かないのかと、帝人には衝動がないと感じているが、それは臨也とて同じことだ。性癖の問題で性衝動とは程遠い所に臨也がいるのもあるが、帝人を淡泊だと責めることは出来ないほど臨也もまた淡泊だった。
「俺は婚前交渉はしないって決めてるんだよ」
 実際は性交渉に価値を見いだしていないというのが、臨也としての回答だが恐らくは帝人はそれを認めないだろう。なにより、それを知られるのはまだ早く、こんな冗談とも本気とでも取れる軽口を口に出した。
「それって一生できないんじゃないですか」
 二人の会話に割入ることはなかった青葉が不意に口を挟んだ。確かに、同性同士の結婚が認められない状況で、婚前交渉云々と言ったところで言い逃れにしか青葉には聞こえなかった。
「俺は人間を愛してるからね。誰か一人と結婚するわけにはいかないのさ」
「…………。」
 芝居がかった身振りの臨也を、暗く陰を落とした帝人の瞳が見据えている。
「へぇー、折原さんって童貞なんですか?」
 容姿だけは美少女然とした青葉が、にやにやと人の悪そうな笑みを湛えて問い掛ける。その言葉には、外見から受ける少女のような柔らかさは無く、それと間逆の鋭さしかなかった。
「どうして、そう受け取るのかな、後輩君は……」
 ひくひくと引きつる口許で臨也は呟くが、今まで睨み付けていた帝人の顔が浮上したことに二人とも気付いてはいなかった。青葉が、童貞かと問うた瞬間に見せた晴れやかな顔を幸か不幸か二人とも見ることはなかった。
「結婚した相手としかしないって意味になりますよね? 折原さんは独身ですから清い体なのかと思ってましたが、違うんですか?」
「結婚を前提にしている相手とは、結婚するまでしないってことだよ。そうじゃない相手とはするさ」
 言い逃れに考えた嘘だが、それでも童貞と言われるとどうしても否定したくはなるのは男の性だろう。臨也もここは童貞だと貫いた方が継ごうが良いのは解っているが、それを認めることは自尊心が許さなかった。
「それって普通っていうか、最低というか……」
「問題ないじゃないですか、臨也さん。しましょう」
 心の底から軽蔑するような、まるで汚物でも見るかのような表情で青葉は呟くが、隣に座っている帝人は対照的な嬉しそうな表情で臨也を見つめていた。
「俺、帝人君とは結婚を前提におつきあいしてるから、しなかったんだよ」
 あくまでも君が好きだから手を出さないのだよと、何度も女を騙してきた手口で囁けば、純粋な少年は頬を赤らめて臨也だけを見つめている。
「それ以前に男同士で結婚出来ないじゃないですか、先輩こんな奴の話聞く必要ないですよ。詭弁です」
 臨也と帝人の顔を見比べながら青葉は、苛立ちを隠しきれない声色で強く言い放った。
「臨也さん…… そこまで」
「帝人君」
 そんな青葉の言葉は耳に入らないのか、二人とも互いを見つめ合っている。主に暑い真名さじで見上げているのは帝人で、それに応じてはいるが何処か青葉への嫌味も含んでいるのが臨也の態度だった。
「どうして先輩はそこで感動してるんですか?」
 現実に引き戻すように声を上げれば、恍惚と見上げていた顔をいつもの表情に戻しながら帝人は口を開いた。
「でも、臨也さん。青葉君が言うとおり僕達結婚出来ません。だからしてもいいと思うんですよ。しましょう、変わりに」
 軽々しく明るい提案は、とても淫靡なモノとは思えない口ぶりだった。どこか旅行にでも出かけようと軽い勧誘のようなノリで、帝人は臨也に自分達の性交を求めた。
「そ、そうかい」
 結果的に、なんの進展も発展もなかった会話に臨也は疲れたような声を上げた。どう臨也が口出ししても帝人は考えを、決意を変える気はないようだ。覚悟を決めないといけないのは、臨也の方のだ。ならば、それを上手く利用していくだけだ。
「それで、日時なんですけど……」
 改めて、控えめな帝人の声が響き臨也は帝人を見ると、ニコニコとどこか今まで違う笑顔で今後の予定を問い掛けている。その横でつまらなさそうにパフェを青葉が食べている。
「いやあ、今夜は無理だから…… なにか希望はあるかい?」
「用があるって言ってましたよね。そうですね、初めてなんで翌日休みだといいなぁと、あとお泊まりしたいです。ね?」
 元々今日はデートという話だったのが、臨也の急用のためにお茶だけということになった。勿論、それも別の日に改めてと臨也は言ったのだが、大切な話がありますのでと妙に冴えた帝人の言葉に解ったと言うしかなかった。
 好奇心が勝ってしまい黒幕体質でありながら、顔を出さずには居られない己の業を思いつつも帝人の話というのはこのことだったのかと、何処か安心している自分がいた。
 帝人の予想外の行動は、臨也でも計り知れないが、それが仕様だと思えばなんの問題もない。ただ、まさか、こんな内容で呼び出してくるとは思わず、それがまた一つのスパイスとなって臨也に興奮を与えている。
 彼等は隠しているつもりだが、臨也は帝人がブルースクウェアのリーダーになったという情報は掴んでいる。いや、帝人も青葉も愚かではないから、おそらく臨也が情報を掴んでいることは想定しているだろう。だからこそ、三者共に知らない、何もない振りをしている。その均衡をいつか壊すことを思うだけで、勃起しそうな程に臨也は興奮なを覚えている。だが、その均衡を帝人自らが崩そうとしている。それとも、この攻勢はブルースクウェアから臨也の目を反らせる目的もあるのだろうかと、勘ぐりたくなる。