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俺が君に恋した理由

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「本当に無料でしょうね?」
母親が店員を睨みつける。
「もちろんです、どーぞ。」
店員はヘラヘラと頭を下げ、俺たち3人を見送った。
俺と、母親と、ミカドを。
そう、俺は言った。
「これが良い。」と。

母親は完全に取り乱し、怒り狂ったが、俺はそんな母親に怯えながら頭を下げる少年がロボットだということに驚いた。
そんな風には見えなかったから。
しかし、ミカドは正式名称を『ミカド=ロボ2010』と言うらしい。
そう、2010は2010年のことだ。今から数十年前に造られたロボであり、かなりの旧式らしい。
古くなってもう売れない、とはいえ捨てるのも勿体ないということで、店の手伝いをしていた。
そうして俺と出会った。

選んだ時、母親も店員も茫然としていたが、ミカドはそれを通り越して唖然としていた。

そんな顔も出来るのが面白い、俺はそう感じる。
面白い、なんて感情を初めて知る。

母親は反対したが、店員が「無料プレゼント」にすると提案したところ、渋々了承した。
ミカドはその間もまだぼんやりとして状況が飲み込めていないようだった。
母親と店員によって何もかも決められてしまうミカドが母親と父親に全てを管理される俺と被る。
きっと俺たちは良い友人になれる、そんな予感がした。


「ミカド。」
「はい。」
「俺は折原臨也、小学5年生だよ。」
「はい。」
「ミカドは?」
「あ、はい。ミカド=ロボ2010、設定では高校1年生になります。」
高校1年生?このベビーフェイスで?中学1年生の間違いじゃないの?
「ええと…。」
ミカドが困ったように言い淀む。
「どうかした?」
「臨也様、で良いですか?」
「…俺にそんな変な趣味無いよ。」
「趣味…?」
「臨也で良いって。」
「そ、それは困ります。…臨也さん、でどうですか?」
「・・・なんでも良いよ。」
「はい、わかりました臨也さん。」
ミカドは笑う。
ロボットのくせに綺麗に笑う奴だ。

それから俺とミカドは一緒に居た。
俺はいつからかミカドのことを『ミカドくん』と呼ぶ様になった。
ミカドくんは最初は恐れ多いと呼び方を嫌がっていたが、そのうち何も言わなくなった。
ミカドくんはアンドロイドとは思えない。
だって俺よかよっぽど表情豊かで人間らしい。
唯一違うのは、歳をとらないことだ。

「ねぇ、ミカドくん。」
「なんですか?臨也さん。」
「今日コレを貰ったんだけど…。」
「っ、ラブレターじゃないですか!」
ミカドくんはまるで自分が貰ったかのように嬉しそうに笑う。
ラブレター貰ったら嬉しいの?
俺は突然苛立って躊躇なくその手紙を破いた。
「ああ!」
ミカドくんが嘆く。
別にこんなもの気が付くと貰ってるんだから、どうしようと俺の勝手でしょ?

小学生のうちは『笑わない不気味な奴』だった俺の評価はなぜか中学生になったら『クールで素敵』になった。
俺はこれっぽっちも変わって無いのに、人間と言うのは本当に意味がわからない。
主に女子生徒から人気を集める俺は小学生のときと変わらず男子生徒からは嫌われている。
いや、状況はもっと酷い。無視されたり仲間外れにされるだけじゃない、実害がある。
俺は何度目だかわからない上履きの無い靴箱を見てため息をつく。
誰がやったかは検討はついている。

「ちょっと、信じらんない!誰よこの落書き!」
職員室に寄ってスリッパを借りて教室へ向かう俺にそんな声が聞こえる。
教室に入ると5,6人の女の子が俺の机に集まっている。
「どうかした?」
俺がそう声をかけると女の子たちは声色を変えて「あ、臨也くぅん!」と俺に近寄ってきた。
…まるで母親のようだ。小学生のうちは男女の違いなどなかったが中学生になるとクラスの女子が外行き用の顔をした母親に見えて仕方ない。
「あのね、私たち消そうと思ってたんだけど〜。」
「ごめんね、消し終わらなくって…。」
「これ絶対頭の良い臨也くんを妬んで男子が書いたんだよ。」

自分の机を見ると『女好きのスケコマシ野郎』と書かれていた。

なるほど。かなり目が悪い奴が書いたみたいだね。
俺がいつ女好きになったのか、こっちが教えて欲しいよ。
ちなみに此処に居る女の子たちはただの馬鹿だ。
こう書かれていてまた女子に囲まれたら、書いた奴の怒りを増幅させるだけじゃないか。
この落書きは無視してほしかった。
「別に、平気だから。」
「…臨也くん可哀想。」
お前らにそう思って貰わなきゃいけないこと自体、俺が可哀想だ。


「…臨也さん。もしかして今日、何かありましたか?」
「え?」
家に帰ってぼーっとミカドくんと二人でテレビをみていた。
特に面白くも無い番組に意識をとられてた俺は反応が遅れる。
「なんで?」
「いえ、なんとなく、そう思っただけです。」
違うなら、良いんです。と、ミカドくんは笑う。
俺はその笑みに肩の力を抜いた。
ミカドくんの前でだけ、自分をさらけ出せる、そんな気がする。

「ねぇ、ミカドくん?」
「はい。」
俺は母親にも父親にも愛されていない。
クラスメイトにも。
女の子たちはただ俺で騒ぎたいだけで、俺を愛しているわけじゃない。
「ミカドくんはさぁ、俺のこと、好き?」
それは初めて聞く質問だった。
答えはわかっている。聞くだけ無駄だし、虚しいことはない。

「好きですよ。」
ミカドくんは微笑んだ。
その答えがプログラムだと知っていても、ミカドくんにそう言われるだけで俺はなんでもできる気がする。
俺はミカドくんが好きだった。人間と違って嘘をつかないから。

作品名:俺が君に恋した理由 作家名:阿古屋珠