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俺が君に恋した理由

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「いい加減にしろよっ!」
ドンッと肩を押され、俺はよろめいた。
目の前には4人のクラスメイト。
クラスでは中心的存在で、俺を苛める奴だ。
…苛めるっていう言葉自体腹立たしくてしかたないね。

「何が?」
「はぁ?お前自分の立場わかってねぇの?」
俺の立場?じゃあお前はわかってるわけ?
いい加減にしてほしいのはこっちのほうだ、このクズ。
俺は黙ったまま心の中で罵倒する。
「んだよ、その目つき。」
4人の中でもリーダー格の男子生徒が俺の襟首をつかむ。
服が伸びるんですけど。

「お前マジむかつくっ」
バキッと結構い良い音がして俺の頬に衝撃があった。
俺より体格のいいそいつの馬鹿力のせいで俺の体は軽く吹っ飛ぶ。

痛い。鼻の奥のほうまで痛い。

ああ、もう本当にイライラする。
この低能で愚かな人間にどうして俺が殴られなくちゃいけないの?
俺がいったい何をしたっていうのさ、何もしてないじゃないか。
今まで目立たないように生きてきたってのに。
いつだって黒ずくめの服を着て教室の隅で本を読んでた。いっそ空気になれたら良かったのに。
予想外にも自分は綺麗な顔をもって生れてしまった。
この顔が気に食わないのなら、潰そうか?いや、お前らの目を抉り取ってやろうか。

「うわ、こいつ鼻血出てるぜ。」
わざわざ倒れた俺の顔を覗きこんで愉快そうに笑った男子生徒。
だから、何がおかしいの?殴られたんだから出るに決まってるじゃないか。
流れる血に触れると、それはやっぱり赤かった。
嫌だな、俺も大嫌いな人間と同じもので出来ていることを思い知ってしまう。

あーあ、だから人間って嫌いなんだ。

本当にもう何もかもが嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
俺が、今後の『折原臨也』を覚醒させたのはその瞬間だ。

「…かおりちゃん、だっけ。」
「あ?」
俺を殴った少年が反応する。
「君の大好きなかおりちゃんが俺のこと、好きだって言ったんだよね。」
「…てめぇ。」
「一つ言い訳したいんだけどさぁ、あの子、俺とヤった時はもう処女じゃなかったよ。」
俺はゆっくりと立ち上がり、まだ忌々しい赤い血が流れる鼻をぐいっと手の甲で拭った。
「っ…。」
「恋だとか愛だとかそんな下らないものに俺を巻き込まないでくれる?」

あとはもう、思うように動いた。
悲鳴やうめき声が聞こえた気がするけど、よく覚えていない。

気が付いた時には先生が二人がかりで俺を押さえていた。
足元に転がる4人のクラスメイト。
どいつもこいつも血だらけでピクリとも動かない。
死んだのかな?
そう思ったら俺は生まれて初めて楽しくなった。

「アハハ、ハハハハハハハハハハハハ。」
俺は先生に取り押さえられながら狂ったように笑った。


結局、4人とも重傷ではあるものの死ぬことはなかった。
ああ、残念だね。
俺は親の権力のおかげで少年Aになることもなく、その後は問題なく中学を卒業した。
まぁ、表面上だけだけど。
苛められる側から苛める側になった俺は、学校中に怖がられた。
「折原臨也」にかかわるな。
それでもそういう人間に近づく馬鹿な奴って案外居るもんだ。
俺は俺なりに中学生活を謳歌した。

親は益々俺を敬遠したが、それ以上に母親と父親の仲が悪くなった。
いや、この言い方はおかしいな、彼らは最初から仲は良くない。
ただ、利害の一致さえ出来なくなった。それだけだ。
母親が別の男を愛した。それだけだ。

母親は体よく父親に俺を押しつけ、家を出た。

だから俺が高校生になると同時に「独り暮らし」をしたいと言うと、父親は二つ返事で了承した。

ミカドくんはその間もずっと変わらなかった。

「ねぇミカドくん?」
「なんですか?臨也さん。」
「俺のこと、好き?」

「好きですよ。」
ミカドくんは変わらない微笑みでそう言った。
ああ、安心する。
人間は変わる。
愛はいつか憎しみになり、憎しみはいつか殺意になる。
裏切られ、騙されて、傷ついて、怒りを増幅させる。
人間なんて、汚いばかりだ。

「ミカドくん、俺も君が好きだよ。」
「嬉しいです、臨也さん。」


ずっと変わらない永遠は、ミカドくんにあった。

作品名:俺が君に恋した理由 作家名:阿古屋珠