ペルソナ2 周防兄弟SSまとめ
トランプマン
紙が擦れるような音にふと顔を上げるとトランプを手にした弟の姿が目に入った。真剣な顔をしてトランプをくる弟に思わず眉を顰める。
「何を占っているんだ?」
「はぁ!?占ってなんかねえよ。占いじゃなくて、一人遊び」
「……達哉」
あやうくお説教モードになりかけた兄を弟はニヤニヤとした笑いで手の中のトランプを差し出す事で意識を殺ぐ。
「ゲームしようぜ。1ゲーム1000円」
「達哉」
賭け事は駄目だと言わんばかりに兄の眉間の皺が増える。冗談だよ、と弟は笑うと兄の前にカードを一枚投げてよこした。
「達哉」
「うるせえな。金じゃなきゃいいだろ」
「お金じゃなければいいという問題では……何か賭けるのか?」
「そうだな…勝った方が負けたほうに何か一つ命令出来るっていうのはどうだ?」
言う間にも兄の前のカードは増える。最終的に5枚になったところで達哉は自分も5枚カードを取った。
「ポーカーのルールくらい知ってるよな、兄貴」
「フォーカードだ」
バサリ、と目の前に広げられたカードを唖然として見送った。
「マジかよ…」
「僕が賭け事に弱いとでも思っていたみたいだな」
ほくそ笑む兄をよそに弟は手の中のカードを落とす。ジョーカー混じりのフルハウスだったそれは、中々悪くない手だ。だが兄のフォーカードの足元にも及ばない。
「兄貴の癖に」
「兄とか弟は関係ないだろう。勝負は時の運だ」
「兄貴って小さい頃から運悪かったじゃねえか」
「余計なお世話だ。じゃ、達哉。風呂掃除」
「……もう一回だ」
低い声で唸るように達哉が言うのに克哉は困ったように眉を寄せ、メガネを押し上げる。それから溜息と共にカードをくると弟に手渡した。
ジョーカー混じりのスリーカードはツーペアよりは強い。
「俺の勝ちのようだな……」
「そのようだな」
「じゃあさっきの風呂掃除は取り消しだ」
弟の勝ち誇った顔に兄は深く溜息を吐く。もとより弟に掃除させるつもりもなかったし、するとも思っていなかったのでどうでも良いらしくぼんやりと時計に視線を送っていた。
「兄貴、もう一回」
「達哉、そろそろ寝ないと明日辛いぞ」
「だからもう一回だけだっつってんだろ」
「……わかった。あと一回だけだぞ」
仕方なさそうにまた息を吐いてカードをきり、交互に一枚ずつ配る。表返して見ると最初からツーペアだった。
「お。俺一枚」
「……僕も」
お互いの手の内を探るようにカードを裏返してテーブルに置き、山から一枚引く。達哉はいいカードが来たのかストップを宣言した。克哉は結局ツーペアのままカードをオープンして弟に見せる。
「…俺の勝ちのようだな」
先程も聞いたような言葉を繰り返し達哉は手の中のカードを開いて見せた。Aが2枚にQが2枚、それから、ジョーカー。
バサリと机に置かれたそれをぼんやりと見て克哉は溜息を吐く。
「そうだな。達哉の勝ちだ」
「じゃあ、俺の言う事聞いてくれよ兄貴」
「……いいだろう」
はぁ、と兄はまた深い溜息を吐いてカードをぼんやりと見た。
とことん達哉はジョーカーに好かれる体質らしい。
カードの中のジョーカーを恨めしそうに睨むと克哉は弟に手を引かれるままソファーから立ち上がった。
罰兄弟
作品名:ペルソナ2 周防兄弟SSまとめ 作家名:なつ