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ペルソナ2 周防兄弟SSまとめ

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DOPPELGANGER




 誰だ、コレは。

 目を何度も擦っては確かめた。コレは、俺か?
 確かに顔は俺だ。だけどその隣で笑っているこれは誰だ。
 見たことも無い顔で笑う兄。見たこともない顔で笑う俺。
 こんな写真撮った覚えなんてない。写真なんて最近は撮ってないから――少なくとも兄貴の背を追い越した後は記憶にない。ましてや俺が兄貴と笑いあっているなんて冗談じゃない。あの兄貴はともかく、この俺が。
 一体誰だ。誰が俺の顔で、俺の姿で兄貴と笑って写真を撮った。
 誰がカメラのシャッターを押した?

「達哉。どうしたんだ?」
 濡れた髪をタオルで乾かしながら兄貴は自室に戻ってきた。メガネが無いからか少し睨むように俺を見る。手にしている写真にも気付いてないだろう、アンタ。
「別に」
 写真をさりげなくポケットに突っ込んで兄貴の机の上の棚から辞書を一冊取り出す。
「借りに来ただけ」
「ああ、そうか。別に構わないよ」
 俺が勉強していると兄貴は嬉しいのか笑う。写真のような笑みとは違う。あれは、兄貴じゃないのか?俺も兄貴も別人で――だったら兄貴が写真を持っているわけがない。いや、写真を撮った人が兄貴に渡したのかもしれない。
 辞書を持ったままじっとしている俺に兄貴は近寄ってくる。ふらふらと頼りなさげに手は宙を彷徨い、机の上の本に落ちる。それから俺の顔を覗き込んできた。
「達哉、何かあったのか?」
「…別に。辞書借りにきただけだって言ってるだろ」
「そうか……?」
 疑うように眉を寄せ、兄貴はメガネを取ろうと机の上の本から手を退けた。
 バランスが崩れて本が床に落ちる。バラバラと散らばったのは間違いなく写真だった。本だと思っていたのはアルバムだったようだ。
「あ」
「いい。俺が拾う」
「あ、いや、達哉はいいから」
 俺が触れるのが嫌だとでも言うように兄はさっさとしゃがんで写真をかき集める。けれど俺も一枚、足元に散らばったものを拾い上げる。
 情けない顔をした兄貴が、ぎゅっと赤い服の裾を掴んでいる。この赤い服は見覚えがある。ある、なんてものじゃない。これは、俺の服だ。
「兄貴」
「あ、ああ…ありがとう」
 手を出す兄貴から遠ざけるように写真を上に上げる。兄貴はきょとんとしたあと困ったようにまた眉を寄せた。眉を寄せるだけで困っているのか疑っているのかわかるのだから俺もたいしたものだ。
 だから、わかるんだ。これは兄貴で、アレは俺で。でも俺は覚えが無くて俺は俺じゃない。
「兄貴、これ、誰」
「誰って……僕じゃないか」
「違う。こっちの赤い服」
 写真を指さすと兄貴の顔がさっと強張るのに、耳の奥で誰かが笑う声が聞こえた。

 そうか。計画的だったんだな。
 誰にでもなく自分につぶやくと笑い声はピタリと止んだ。


罰兄弟