ペルソナ2 周防兄弟SSまとめ
同じ夜
顔も声も姿形も身長や体重まで、俺の「兄さん」に酷似したその人は俺を「弟だ」と言い切った。
着ているものの趣味や、視力が悪くてメガネをかけていることや、そのメガネに色が入っていることや、何より俺の名前を呼ぶその声があまりに似過ぎて本当は泣き出しそうになる。
違うんだ、と言うのは本当は自分に言い聞かせる為で、でないと本物と勘違いしてしまいそうになる。その声で呼ばれる名も、自分のものだと勘違いしてしまいそうになる。けれどその名は俺であって俺でない人に捧げられたものだ。その声も、髪も、差し伸べられる手も決して俺には届かない。
「達哉」
あの人と同じ声で俺を呼ぶその人は、少し悲しそうに口元を歪めた。その仕草はあの人とは若干違うようで、少し安堵する。
「……」
「達哉、その、僕は」
いつも説教しか紡ぎださなかった口が、それ以外の言葉を発する。しどろもどろになり、俯く姿なんてあの人は見せなかった。
違う。似ているようで異なるものに、喪失の疑似体験をさせられているようだ。また失うんだ。俺は、また。
背を向けてさっさと離れる。こんな思いはもうたくさんだ。これ以上側になんていたくない。俺じゃない。俺は、違うんだ。どうしてそれを知ってなお、俺の名前を呼ぶんだ。
「達哉、あまり無茶はするんじゃない」
あの人と同じ言葉が彼の口から零れ落ちるのに、俺は悔しくて唇を噛み締めて振り返ることなくその場を後にした。
罪達哉&罰克哉
作品名:ペルソナ2 周防兄弟SSまとめ 作家名:なつ