二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

雨の夜に

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

もう泣きそうだった。些細なことじゃないか。なぜに山崎はこんなに動揺しているんだろう。今日だって土方はのうのうと屯所で仕事しているのに。話にならない。眠い。雨の音がばらばらと直接脳味噌に打ち付けるような感じがして、首の付け根に寒気が走った。
「本気で惚れたならそれはそれでめでてえ話よ。あの仕事人間がさ。赤飯でも炊いて祝わないとな。俺ぁ具合が悪いから、今日はもう上がらしてもらうよ」
薄暗い廊下を行きながら、天井がふと傾いた。魔が差してあの人が仕事してる部屋まで行って戸口で声をかけた。
「土方さん、俺」
さっきまで平気だったのに声が掠れていて自分でも驚いた。咥えタバコのままあっちも唖然とした顔をしている。部屋が明るくて目がちかちかした。今度は床が傾いた。部屋がヤニくさい、黄ばんでいる。この人の書類はいつもヤニの匂いで嫌になる。俺が女ならタバコ吸う男はそれだけで嫌いだよ、女ってわかんねえ、と思ったら目の前が一瞬暗転してまた戻ってきた。眠い、熱い。
「お前真っ青だぞ」
「言われなくてもわかってまさぁ、だから俺は今日はもう寝るって言いに」
「いつもそんなの事前に断ったことないだろ、いきなり気持ち悪い。本格的に具合悪いのは分かった、もういいから寝ろ」
「土方さん」
タバコは知らないうちにもみ消されていた。
「今夜はずっと屯所にいるんですかい」
「おかしなことばかり言いやがる。この書類他に誰がやってくれんだよ、ずっと仕事だよ」
それだけ訊いてまた暗い廊下に戻った。いや、実際は廊下は暗くなかった。ただ、俺の周りが暗くなっただけだった。どさりという音と共に真っ暗になった。音と感触だけがやたらに強く感じられた。ほてった頬に廊下はつめたかった。普段よりも重力がかかっているかのように、体が廊下に吸い寄せられていた。古い床板の匂いはそんないいもんじゃない。廊下を走るな、頭に響く。隊長!隊長!っていっつも山崎はやかましい…
作品名:雨の夜に 作家名:東湖