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誓い

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4.







目が覚めたとき一瞬、自分がどういう状況にいるかわからなかった。
鳥の囀りが目覚ましがわりになったが、身体の方が起きることを拒んでいた。柔らかな感触と温い体温が気持ち良く離れたくない。
……なんだコレ?
柔らかなものをそのまま数回揉む。
「……ん……あ……」
寝ぼけたような声に混じって甘い吐息。
女の声……って――
「真冬?」
ようやく俺は状況を理解した。
真冬の胸に抱かれて眠るまでの紆余曲折も。
「……んにゃ……」
のんきな寝言を零している女の顔を見つめる。
昨日、あんなに不安でたまらなかった気持ちが嘘のように消え去っている。
コイツは昔からそうだ。
普段は鈍感なくせにここぞというときには鋭い。
ヒトの不安や痛みにはすぐ気付く。
無防備な寝顔で男を抱き締めたまま寝ている姿をみてると、違った意味で不安になる。
このお人好しが俺以外の男にもこういうことをやるんじゃないかと。
ふと浮かんだ考えにこめかみが動く。
……すげームカつく。
こいつがほかのヤツを抱いて眠るなんて真似したら、その男をどーにかしそーだ。

まったく。
なんでコイツなんだか。
いい女は山程いたし、抱いてきたのに俺の心に居場所ををつくったのはこの色恋沙汰に疎く、色気も何もないこの女だけだった。
どうしてオマエなんだか。
顔にかかる髪をはらってやり、そのまま頬を撫でる。
すげーやわらけぇな。
面白いのでしばらくつついていると鬱陶しそうに顔をしかめて、手を払われた。
「――もう……鷹臣くん……やめてよ………」
……起きたわけじゃないな。
目は閉じられたままだし。
どうも夢の中でも俺に遊ばれてるらしい。
思わず口の端が上がる。
柔らかな頬に手を添える。
そこに小さな白い手が重ねられる。
また払われるのかと思ったが、そのまま握り締められる。

「……ん……大丈夫だよ……鷹臣くん…」

………………。

顔が緩むのがわかる。馬鹿みたいに嬉しいと純粋に思う。
こんな気持ちを抱かせるのは、祖父母とコイツしかいなかった。
「真冬――」
眠る女を抱き寄せる。
いつか見たワンシーン。
ずっと一緒にいてください。
そんな懇願は俺はしない。
オマエが勝手に俺に懐いて、勝手に居場所を作った。
だからその責任をオマエはとれ。
ずっと一緒にいろ。
ほかのヤツのものになるなんて許さない。

オマエは俺のものだ。

作品名:誓い 作家名:如月花菜