ささめゆき
「さっきからなにくだらねーことばっかり言ってやがる。ヅラが止めなけりゃ死なずに済んだだァ? 笑わせんじゃねーぞ。ヅラが止めてなけりゃあ、脱獄なんざ失敗して、ここにいるヤツら今頃みんな仲良く牢獄に入ってるとこだったぜ」
「……失敗したとは限らねェ」
「どこから湧いてくんだその自信。テメーがそんなに頭がいいっつーのなら、テメーがたてた計画がどれぐれェ無謀なモンだったかわかってるはずだろうがよ。それを棚にあげて、他人を責めたててよォ。ただの八つ当たりだろ、それ」
桂のそばで銀時と高杉はにらみあい、あたりの空気が強張った。
しばらくして、銀時はふいっと高杉から顔を背けた。さらに身体の向きも変えて歩きだした。
その後ろ姿を桂が呆然と眺めていると、少し進んだところで銀時が立ち止まりふり返った。
「……そうだ、ヅラ、テメーもな、くだらねーこと言われて黙ってんじゃねェぞ。ムダに責任感じることでテメーは気が済むのかも知れねェが、はたで見てるモンにしてみりゃ胸クソ悪ィだけだぜ」
桂の眼を真っ直ぐに見て銀時は言った。
そして、桂が反論するために口を開こうとしたとき、銀時はふたたび背を向けて歩き始めた。
追うべきか、桂は迷った。
しかし。
「なんだ、アイツ」
高杉が不機嫌さを色濃く漂わせて言ったので、銀時の去っていったほうにわずかに動き出していた桂の足が瞬時に止まった。
ここにいる者たちと今後のことなどを話し合わなければならないと判断したからだ。
門下生たちに対して強い影響力を持っていることを桂は自覚していた。
松陽を亡くし、高杉を含めて門下生たちはひどく取り乱していた。
自分が指示を出さなければならないと思った。