ささめゆき
むごい、と桂は思った。
胸が鋭利な刃物で深く切り裂かれたかのように痛んだ。
そして、次の瞬間には身体がカッと熱くなった。身体中を流れる血が煮えたぎっていた。眩暈がするほどの強く激しい怒りで。
松陽を門下生たちで埋葬したあと、冷たい風の吹く墓場で高杉は桂を責めた。
「テメェがあん時止めなけりゃあ、松陽先生は死なずに済んだ!」
高杉も松陽のことを慕っていた。それだけにむごたらしい遺体を見せられてかなり動揺しているようだった。
「自分のしでかしたこと、ちゃんとわかってんのか!?」
桂の羽織の衿をつかんでグイグイ引っ張りながら怒鳴った。
わかっている、と桂は思った。
きっと誰よりもわかっていると思った。
あのとき止めなければと後悔していた。
時間がもどることを切望するほどに。
「おい、なんとか言えよ、コラ」
苛立たしげに高杉は右の手のひらを振りあげた。
それが自分を叩くためのものだとわかっていても、桂は動かなかった。
しかし、高杉が桂を平手打ちする寸前に、その手を止める者がいた。
「いいかげんにしろ」
低くうなるように銀時が言った。
高杉は自分の腕をつかんでいる銀時の手を乱暴にふり払った。
「なんだ、銀時、てめーはコイツに腹ァたたねーのかよ?」
「ああ、たたねーよ」
即答し、銀時は高杉に強い眼差しを向けた。