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ささめゆき

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 ふと。
 気がつけば足は松陽の家を目指していた。
 家に帰るつもりであるのに。
 引き返そうと思った。
 しかし、その瞬間、脳裏に銀時の姿がよぎった。松陽を埋葬した日以来、逢っていなかった。
 銀時が脱藩したという話は聞かない。
 今頃どうしているのだろうか、そして、なにを考えているのだろうか。
 それらのことが無性に気になった。
 結局、桂は引き返すのをやめにして歩き続けた。
 やがて松陽の家のまえに着き、訪れを告げた。
 だが、家のなかからは、応える声も物音もしなかった。
 桂は戸を開けて中に入る。
 家のなかは静かで冷えきっていた。足袋越しに廊下の冷たさが足の裏に凍みる。
 足は自然に、かつて松陽から学問を教わった部屋へ向かっていた。
 そして、その八畳間で銀時を見つけた。銀時は寝ころんでいた。その眼は閉じられている。
「……銀時」
 呼びかけた。
 しかし、銀時は眼を閉じたままだ。
「おい、客人が来ているのになんだその態度は。失礼だぞ」
 そう強い調子で言った。
 すると、銀時はようやく眼を開けた。
「……入っていいっつってねェのに勝手に家んなか入って来たヤツに言われたかねーな」
 よっと声をあげてはずみをつけて銀時は身体を起こした。あぐらをかいて座ると、ふわあと大きなあくびをする。さらに、首のうしろをぼりぼりと掻く。まだ寝足りないといった様子だ。
作品名:ささめゆき 作家名:hujio