ささめゆき
外にいるのとあまり変わらないぐらい寒いこの部屋で、しかもいつもの着流しだけでなにも羽織らず上掛けもなく、よく眠れるものだと桂は思った。
「……どうして火鉢に炭を入れない?」
視線を部屋の隅にある長火鉢のほうへやる。
「めんどくせーんだよ」
投げやりな調子で銀時は言う。
だから。
「めんどうもなにも、この寒さでは風邪をひくぞ」
桂はそうたしなめた。
すると銀時は一瞬口を開けたがすぐに閉ざす。なにかを言いかけてやめたらしい。
もしかして、と桂は思う。
もしかして、風邪をひこうが死んでしまおうが構わないと言うつもりだったのではないか。
もちろんそれはただの推測だ。
けれども、もしその推測が当たっているのならと思うと、かすかに寒気がした。
結局、桂が炭火を熾して、それを火鉢へ移した。
また、銀時に水の入った鉄瓶を用意させて、火鉢の灰に刺した五徳の上に置いた。それが沸いてくれば部屋のなかはずいぶん暖かくなるだろう。
「まったく、これではどちらが客かわからんな」
畳に正座して桂は言った。
すると。
「うるせェ」