ささめゆき
銀時は眼を合わせずに短く言っただけで、それ以降は黙っていた。
会話が弾まない。
その事実が桂の胸のなかの空気を重いものにする。
今日ここに来たのは、銀時の様子を見たかったからだけではなく、以前のような気心の知れた切り返しの早いやりとりがしたかったからだとようやく気づいた。だが、それは無理らしく。
さびしい、そう思ってすぐに打ち消す。バカバカしいと思った。
「銀時」
沈黙を破って呼びかけた。
けれど、銀時は返事をせず、顔をあげようとすらしない。
桂はかまわずに続ける。
「高杉が脱藩したのを知っているか」
そう問いかけた。
しかし、それでも銀時はなにも応えなかった。
桂は口を真横に引き結んだ。
放っておいてくれと拒絶されているように感じる。
軽くため息をつくと、視線を畳に落とした。
そのとき。
「……知ってる」
少しかすれた声で銀時が告げた。
桂は驚いて眼をあげ、銀時を見る。
すると、銀時は桂を見ないまま言う。
「アイツは家族から甘やかされて育って、与えられることに慣れているから、与えられることがあたりめェだと思ってるから、与えられたものを簡単に捨てることができるんだろーな」