ささめゆき
「おまえはそれでいいのかって聞いてんだ」
だが、桂は答えられない。
松陽が処刑されたことへの怒りはまったく覚めていなかった。松陽を死刑に至らしめたこの世界をいっそ更地にしてやりたいと思うほどの憤りがあった。
けれども、同時に桂家の当主であるという自覚があった。
それらは相反していて、両方を選ぶことはできない。
桂は口を堅く閉ざし、うつむいた。
本当はうつむきたくはなかった。銀時の眼を真っ直ぐに見て、自分の考えをはっきりと告げたかった。それができなくて、くやしい。
ふと。
なにかが近づいてくる気配がした。
顔をあげると、視野に銀時の手が飛び込んでくる。
その手が桂の顎をつかんだ。
外を歩いてきた桂の頬よりも冷たい指先。
桂が眼を見張っていると、一気に銀時が距離を詰めた。
とっさに桂は身を退こうとしたが、銀時の手がそれをゆるさない。
唇に唇が押しあてられる。
触れてすぐに離れたものの、桂が言葉を紡ぐまえに口をふたたび塞いだ。今度はすぐに離れることはなく、感触を確かめるように動き、やがて舌が入ってきた。
これ以上は侵入させまいと歯を食いしばる。けれども、舌の動きに思わず、ふっと息を漏らした拍子に力が緩み口を開けてしまう。
やがて唇が離れたあとも桂は呆然としていて、銀時にあっさり押し倒された。
しかし、後頭部を畳に打ちつけ、ハッと我に返る。