ささめゆき
けれど、男を受け入れることで快楽を得ることを覚えた身体が、他の男と試してみたいと思っても不思議ではないだろう。快楽を追い求めることは決して罪ではないのだから。もしかして、銀時に気づかれぬようこっそりとつまみ食いぐらいしたかも知れない。
だが。
それは絶対に嫌だ。
銀時は上半身を起こした。そして、桂の身体の上から退くと、あぐらをかく。
「……悪ィ」
謝った。
視線を畳に落とし、首筋に手をやる。
気分はすっかり萎えてしまっていて、続きをする気になれない。
「銀時」
名を呼ばれたから、顔をあげる。
桂が着物のまえを合わせながら言う。
「なにか悩みでもあるのか?」
生真面目な表情と声。
もちろん冗談を言っているわけではなさそうだった。
思わず、銀時は軽く笑う。
「いや」
否定する。
「ちょっと疲れてるだけだ」
妙なことを考えるのは疲れているせいだろう。
「そうか、ならばさっさと寝ろ」
相変わらずの堅い声でそう言うと、桂は立ちあがった。自分の布団のほうへ行くのだろうと銀時は思ったが、桂は部屋の障子のほうへ向かった。