ささめゆき
「旅立つには最悪の天気じゃねーか」
「貴様は文句が多い」
銀時と桂は旅籠をあとにした。かつては栄えていたらしいが現在はすっかり廃れてしまった町の廃業した旅籠のいくつかに分散して攘夷軍が潜伏しているのである。
外は雪だ。それも大雪だ。
人通りのない寂しい道を二人肩を並べて進む。お互い、羽織袴に笠という出で立ちだ。
空から絶え間なく落ちてくる雪のなか、黙々と歩く。
「……あ」
歩いているうちに、草鞋の鼻緒が切れた。
銀時は立ち止まって腰を降ろした。
すると桂も足を止め、銀時を見おろす。
「替えてやろうか」
桂の手には手拭いがあった。
「いや、いい」
断ったが、手拭いは受け取る。
「先に行っとけ、すぐに追いつくからよ」
手拭いを持っていないほうの手を向こうへと揺らした。
桂は小首を傾げて、考える表情になる。
やがて。
「わかった」
そう返事すると、桂は身体の向きを変えて歩きだす。