ささめゆき
案の定、銀時の桂に向ける眼差しは鋭いものになった。
だが、一度口にしたことを取り消すのは性に合わず、桂は口を堅く引き結んで銀時の眼を見返した。
銀時は視線を逸らさずに立ちあがった。
結局、塾生たちが見守るなか、仕合することとなった。
自分から言い出したことではあったが、桂にとっては不本意なことだった。
けれど、銀時にとってはどうだったのかは知らない。
銀時は他の塾生から竹刀を受け取るやいなや、桂に襲いかかってきた。すかさず桂はその攻撃をかわした。だが、銀時は次々に攻撃してきた。型破りの野性的な剣だった。桂は防戦一方で、自分から仕掛けることはできなかった。
ふいに、予想外のところから銀時の竹刀が振りおろされた。
これは防げない、と桂は打たれるのを覚悟した。
そのとき。
『ハイ、そこまで』
松陽の朗らかな声がした。
桂と銀時の間に松陽が割って入っていた。松陽は銀時の身体を押さえこんでいた。
『……先生』
すっかりおとなしくなってしまった銀時を見て、桂は思わず言った。
『まだ勝負がついていません。邪魔をしないでくださいませんか』
強い調子で桂が言うと、まわりで観戦していた塾生たちが息を呑んだ。
松陽は銀時を放し、桂のほうを見た。
そして、ゆっくりとうなづいた。
その顔には優しい笑みが浮かんでいた。抗議した桂に対して怒っていないようだった。
松陽が他の塾生たちの元へ行ったあと、仕合を再開した。