ささめゆき
銀時の剣術は滅茶苦茶だと桂は思った。
だからこちらも滅茶苦茶でいくと桂は決めた。
桂はどんどん攻めていき、銀時もそれは同じで、先程までよりさらに激しい戦いとなった。銀時だけに集中し、やがて、まわりにいる塾生や松陽の存在を忘れた。
なかなか決着がつかなかった。
しかし。
桂の放った鋭い一撃に打ちつけられそうになって、銀時が慌てて飛び退いた。だが、その拍子に身体の均衡を崩してしまい、さらにうまく着地することができずに尻餅を着いた。銀時の手から竹刀が離れた。
一瞬、庭が静まりかえった。
そして次の瞬間、まわりにいた塾生たちがわっと歓声をあげた。
桂はその声のほうを向かず、荒く息を吐きだしながら銀時を見据えていた。
銀時の呼吸も乱れていた。ふと眼を桂から逸らすと、立ちあがった。そして、ふたたび桂を見た。
『……次は負けねー』
きっぱりと告げた。
桂は表情をふっと緩ませた。
『次も俺が勝つ』
そう断言してやった。
銀時が近づいてきた。
『いや、絶対ェ、俺が勝つ』
『いいや、俺が勝つ』
お互いの身体が触れそうなほどの距離で言い合った。
それから、どちからからともなく歩き出し、水を求めて井戸へ向かった。