ささめゆき
その日以来、桂は銀時とよく一緒にいるようになった。
さらに日が経つにつれ、銀時と他の塾生たちはあたりまえのように話をするようになった。
銀時は仲間の一人として見なされるようになっていた。
郷里で桂は松陽の門下生たちと連絡を取り、この困難な局面をどうやって打開するかを話し合った。会合の場はたいてい松陽の家だった。
門下生たちが一目置いていたのは高杉だった。高杉はその才を松陽や藩主にまで認められている。そのため、門下生たちは高杉を頼りとしているようだった。
その高杉が松陽を牢獄から奪還すると言いだした。
高杉の意見に多くの門下生たちが賛同するなか、桂は正面からそれに反対した。
桂はありとあらゆるつてを頼って松陽が釈放されるように働きかけていた。だが、もし松陽が脱獄すれば、その努力は水の泡と消え、松陽は一生追われる身となり捕らえられればおそらく死罪を免れない。
ことを荒立てて状況を悪化させるべきではない。
松陽が捕らえられているのは不当であり釈放されるのが正当であると認めさせるべきだ。
桂は松陽の家に集まった者たちに懇々とさとした。
やがて、高杉に対して賛同の声をあげていた者たちも意見をひるがえして桂側についた。
最終的には、高杉の案は却下された。高杉は忌々しげに舌打ちした。
だが。
その三日後、桂は高杉に反対したことをひどく悔やむこととなった。
松陽が死刑に処されたのである。
牢屋敷から返された松陽の遺体はなにも身につけていない丸裸の状態で、拷問された跡が全身にはっきり残っていた。