好物=甘いもの2
帰り道、帝人と静雄はそれぞれに荷物を持って夜道を歩いていた。行きとは逆に、今度は帝人が静雄を案内するように歩く。
大きなリュックに詰められていた大量の食材は、帝人がはりきって料理に使った為にだいぶ減っており、以前より格段に軽くなっている。帝人はひたすら恐縮していたが、静雄にとっては重くもなんともなく、気分的にこれはただの夜の散歩だった。
帝人の歩調に合わせるように、自然と静雄の歩みも遅くなる。
「こんな遅くになっちまって悪かったな」
「あ、いえ、僕のほうこそ遅くまでお邪魔してしまってすみません。静雄さん明日もお仕事ですよね?」
「ん? あ、ああ。まあそうだが」
「僕は明日、まだ休日なので、ゆっくりできますので」
「ああ、そういや連休だったっけか」
取立ての仕事をしているとカレンダー通りの休日などついつい忘れがちになってしまう。
「はい」
「ふーん」
会話が途切れてしまった。
帝人は居心地の悪さを感じていた。もともとお互いに相手のことを詳しく知っていた訳ではなかったので、共通の話題を見つけ出せない。
…もっと、正臣みたいに面白い話(寒くてもいいから)がぽんぽん飛び出せば、きっとこうした沈黙とかにならないで間が持つのに…。
しかも静雄は帝人に輪をかけて無口なのだ。どちらかというと自分もよくしゃべる方ではなかったので、こういうときはなんとなく黙ってしまう。何か話さなくては、と焦れば焦るほど、頭は真っ白になってしまった。
そもそも、思い返せば最初から自分は色々と静雄に迷惑をかけていた。静雄に野菜を食べさせたいというだけで、こんなにいろいろと付き合わせてしまっている。
好き嫌いぐらい、あったっていいじゃない 人間だもの。
ぐるぐると考えれば考えるほど自己嫌悪に陥ってしまう。
あああ、何日か前の僕、どうしてそんなに意固地だったんだろう…。