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好物=甘いもの2

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「おじゃまします・・・」
ガチャリと鍵を開けて扉を開く。
平和島の表札もあったし、鍵も合ったし、扉も開いたから大丈夫…なはず。

おそるおそる見渡せば、きれいに片付いて・・・というよりは物がない。
帝人のボロアパートに比べて2回りは広いが、そこは一人暮らしなのかそれほど広くは無かった。

朝から締め切っていた部屋はムッとしていたので、帝人はエアコンのスイッチを入れる。
田舎の実家なら迷わず窓を開けたところだが、ここでは開けたら暑い空気が入ってくるだけだ。


さて、と
しばらく冷風を堪能した帝人は置きっぱなしにしてあった荷物を引き寄せると中身を漁りだした。
約束していたトマトとキュウリ。後とナスとだめもとでピーマン。
までは予想の内だったが、え?ジャガイモにタマネギにニンジン…。っていうか、これだけあれば何でも作れるんじゃないかな…。え、っていうかなにこれ、お米?
信じられない、道理で重いわけだし。これって持って運ぶ量じゃなくてダンボールで送る量だよね。


…どうしよう。
さすがに、この量は置いていくにも申し訳ないし、持って帰るのにも凄い量になる。
自分は得意ではないものの、出来ないなりに自炊をしているが、静雄さんって料理とかしてるのかな・・・。
とりあえず、持ってきたものを半分にしてみた。
「うーん」
減ったは減ったが、まだ多い。
時計を見れば、まだ午後3時半といったところ。
静雄と別れてからまだ30分ほどしか経っていない。まだしばらくは帰ってこないだろう。

とりあえず、冷やした方がいい野菜は冷蔵庫に入れておこう。すぐ冷えたものが食べられた方が美味しいもんね…。

他所のお宅の冷蔵庫を勝手に開けるのには少々抵抗があったが、これも静雄に美味しい野菜を食べさせたい、という熱意を燃やした帝人の恐るべき積極性だった。

さてこの野菜をどうしようか、と頭を捻っていた時に帝人のケータイが鳴った。
「あ、静雄さんからのメール…」
『すまない、さっきのヤツはとっ捕まえたんだが、なし崩し的に仕事に入っちまった。このまま6時過ぎまで帰れないんだが、お前に渡した鍵しか持ってないんだ』

「ああ、そっか…」
自分が鍵を掛けてしまうと、家主の静雄さんが中に入れなくなってしまう。
部屋を退散して静雄さんに鍵を返しに行くという手もあるが、半分になったとはいえ、あの荷物を担いで常に移動している静雄さんを捕まえられる自身が・・・無い。・・・うん。残念だけど。

あと二時間半…か、テレビでも見ていれば待つのは苦痛では無いが…。
ちょっとずうずうしい気もするが、今ここでご飯を炊いてしまうというのはどうだろうか…。
そうすれば、二人の一食分が一度に作れて効率的だ。

『静雄さんがよろしければですが、僕留守番してましょうか?
それとせっかく食材があるので、もし使わせていただけるならお台所お借りしてもいいでしょうか?夕飯用意して待ってます』

どうだろう、さすがにムッとされるんじゃないかな…
不安な気持ちになりながらも帝人はメールを送信した。

『留守番のほかに、夕飯まで悪いな。家のものはテキトーに使っていいぞ。ケガすんなよ。』

返信を待っている間は生きた心地がしなかったが、
よし!
許可が下りたので、では早速ご飯を炊こう!

手際のイマイチな自分が夕飯を作るとしたら、2時間半なんてあっという間だ。
使えるかどうか分からない炊飯器を見つけ機能を確かめる。あ、なんとか使えそう。

そういや、塩コショウとかってどこにあるんだろう???
あ、味噌が無い…。

さっきまでは、何でもできるような気がしたのだが、いざ初めてみるとどんどん不安になっていく…。


えーっと、僕、こんな調子で夕飯作れるんだろうか…?

作品名:好物=甘いもの2 作家名:しば