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ケンカップルとサンドウィッチ!

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「いぃぃぃざぁぁぁやぁぁああああ!!!」
 肝っ玉の小さい者や心臓の弱い者ならぶっ倒れてしまう程にドスのきいた声が辺りに響く。
「シズちゃんにしては、珍しく回りのことを考えた投げ物チョイスだったねぇ。帝人君、怪我はない?」
 自分に向けられている殺気など、どこ吹く風で、臨也は少し離れた所にいる帝人に声をかけた。
「あ、はい。おかげさまで・・・・・・」
「いや、帝人、怪我してんだから、おかげさまじゃないだろ・・・・・・」
 正臣が的確に突っ込む。緊急時の彼は、とても常識人だ。
 帝人は困ったように眉を寄せて、「でも・・・・・・」と言葉を濁した。反射的に答えてしまっただけで、実のところ、帝人自身も何が「おかげさま」なのか分かっていなかったのだ。ある意味、正しい日本人の姿といってよい。
「あ、でも、全然痛くないし――」
「へえー! 怪我しちゃったんだ! ねぇ、シズちゃん、煮え滾った頭を冷やして、よ~く聞きなよ? 帝人君、シズちゃんのせいで怪我したんだって!」
 高らかな声で臨也が言うと、最前まで、「いけない! 怒りで我を忘れてる」(と、遊馬崎たちが楽しそうに言っていた。)状態だった静雄が、その言葉を聞いてピタリと動きを止めた。バーサーカー状態を自力解除したことに、いつもの様子を知る周囲はビックリだ。
 静雄は帝人の方に歩み寄ると、自分よりも遥かに小さな少年を見下ろした。
「おい、あのノミ蟲がほざいたことは、本当か?」
「いえ、別に静雄さんのせいじゃ――」
「怪我したんだな!?」
「あの、だから――」
「しましたよー。コレっす」
 怒鳴りつけるような言い方の静雄に、それでも辛抱強く言葉をかけようとする帝人。しかし、その努力は、埒が明かないと判断した正臣が、帝人の怪我負った方の手を静雄に突きつけたことで徒労に終わった。
 絆創膏が貼られた手を見た静雄は、夕闇で表情こそ分かりにくいが、痛々しい顔をして、まるで叱られた子どものようにしょんぼり肩を落とした。
「・・・・・・悪かった」
 ――あの平和島静雄が頭を下げて謝った。
 静雄のことを危険取り扱い物としか把握していない周囲の人間がどよめいた。人垣からは、ざわめきと一緒に、「あの高校生、何者だよ?」などという言葉が聞こえる。
 帝人は驚き慌てた。
「いや、本当に気にしないでください! この通り、掠り傷ですし、痛みもないです。そもそも、直接の原因は――」
「赦してくれるのか?」
 頼むから、話を聞いて! と帝人は叫びかけたが、静雄のあまりの気迫に圧され、コクンと頷き、「気にしないでください」と再度言った。
「・・・・・・ありがとな」
 静雄は嬉しそうに微笑み、帝人の頭を撫で撫で。周囲の度胆はまた抜かれた。
 力加減の勝手が分からないのか、帝人の頭を覆う大きな手が微かに震えているのを感じて、帝人は苦笑する。
 そんなに、恐る恐るじゃなくて大丈夫なのに、と思ったが、かと言って力が強すぎてトマトが潰された後のような姿にはなりたくないので、黙っておく。
 隣に立つ正臣も帝人と同じく、トマトがグシャーッとなるところを想像したのか、心なしか顔色が悪い。
 杏里は、帝人と静雄を交互に見たあとで、「お2人は・・・・・・、えっと、仲が良いんですね?」と感想を漏らした。帝人としては、先程の狩沢のボーイズにラブる話もあるので、誤解のないようにしておきたいところだ。
 その話をした当の本人はと言えば、やれやれと言った雰囲気の門田の後ろで「イケメンな野獣系と小動物系童顔男子高校生の年の差カップルってのも良いよね~!」と遊馬崎に熱く語っている。もう駄目だ、この人。
 場が丸く収まりかけたところで、帝人は、日も大分沈んでいることだし、そろそろ帰りたいなぁ、とぼんやり思った。