GUNSLINGER BOYⅡ
君と出会う時
臨也の父親は社会福祉公社の幹部だ。
幼いころから将来を期待され、その期待に完璧に応えてきた。
親に決められた通りエスカレータ式の学校に入り、成績は常にトップをキープし、表立っ
て問題を起こしたりもしなかった。
容姿端麗で何でも器用にこなす臨也は一見、完璧超人に見えただろう。
しかしその人格は元より修正不能なほどにひどく歪んでいた。
臨也の趣味は人間観察。
周囲から自分がどう見えるか完璧に計算した上で、自身には絶対に嫌疑が及ばないような
方法で火種をばらまき様々な根回しをして事態を悪化させる。その中で愛する人間という
生き物がどんな行動をとるのか高みの見物をするのが楽しみだった。
臨也が影でどんなことをしているのかを知っている幼なじみの新羅は「君を一言で表現す
るなら、〈人でなし〉だよね」と臨也の日頃から言っている〈人、ラブ〉という言葉を皮肉
って言った。
飛び級をして大学を卒業した後は、当然のように社会福祉公社で働くことになった。
それまで仕事にはさしたる興味は無かったのだが、公社に入ってから公社の裏の顔を教え
られてからは認識が変わった。
臨也が強く興味を引かれたのは社会福祉公社の作戦2課が運用する〈義体〉という存在だ。
義体は、人間を元にして作られたいわばサイボーグだ。しかし脳自体は人間のそれと変わ
らないという。
臨也は人間を愛しているが、義体にはどうなのだろう。
義体の担当官は記憶の抹消された彼らを一から自分の使いやすいように教育していく、
というのにも興味を引かれた。
まっさらな状態の子供を側において観察できるのだ。
臨也は小さな子供は理屈が通じないので苦手だったが、義体は10代前後。丁度いい。
臨也は父と違い名誉や昇進に興味は無かったし、つまらないデスクワークをしながら公社
にこもって指示を出すよりは義体を連れて裏の仕事をする方がずっと魅力的に思えた。
そういうわけで臨也が作戦2課への配属を希望すると、当然のように反対にあった。
自分の跡を継がせようと思っていた自慢の息子がわざわざ命の危険を伴う裏の仕事をしたいと言い出したのだから、反対するも当然だろう。
しかしそれまで(表向き)反抗などしなかった臨也の熱意(演技だが)に押され、うちの
息子も自分の意見を持てる大人になったなどと全く見当ちがいの感動をさせ、最終的には
巧妙な話術により希望道理に作戦2課へ入ることに成功した。
作品名:GUNSLINGER BOYⅡ 作家名:net