二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

家庭教師情報屋折原臨也5

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 


 夏の太陽が眩しく地面を焼きつける中、静雄は新宿の待ち合わせに指定された場所に立っていた。肩にかけている鞄の中には愛用の参考書とノートと筆記具他、財布や携帯電話などが入っている。時計を見れば、約束の時間まであと十分程あった。単語の一つや二つ暗記するのにちょうどいい時間だったが、静雄は目の前や周りを過ぎていく人々を見ていた。そうしているとやはり池袋とは違うのだなと思った。まず明らかに大人が多い。静雄のような学生も歩いてはいるが、池袋に比べればどこか肩身が狭そうに見えた。
 壁にもたれかかりながら、静雄はまとわりつく熱気に顔を顰めた。
――― 暑い……
ヒートアイランド現象という言葉が静雄の頭に思い浮かぶ。本当に暑い。ビルが太陽光を反射するだけでここまで局地的に温度が上がるのか。人類発展の負の遺産め。暑い。静雄は心の中で罵った。建物の中に入り涼を取ろうとも思ったがしたがあと九分。臨也はもう来るだろうと思い、静雄はそのまま待つことにした。しかしそのまま陽の下にいては熱中症になる。そう考え、静雄は建物のひさしで丁度影になっている所に移動した。そんな所でも、日向より幾分涼しく感じられた。
そして静雄の予想通り、二分後に臨也は現れた。
「や、静雄君」
「こんにちは」
今日も今日とて暑いというのに、臨也は相変わらず黒い格好をしていた。
「その格好、暑くないのか」
「特には。俺平熱低いし」
――― いやそれは関係ないんじゃないか…?
しかし静雄は無駄な返答と考え、思っても口に出さない。
「もしかして俺結構待たせちゃった?」
「いえ、そんなことはないです。俺もさっき来たところだから」
「じゃ、行こっか」
そう言って踵を返した臨也に、静雄はついて行った。

 それにしても人が多い。若者からお年寄りまで様々な人が静雄たちと逆のほうへと歩いてきた。そのため大量の人の波の間を縫いながら、二人は進んでいくことになった。臨也の方は慣れているので、すいすいとそこに道があるように何事もなく歩いていった。
「ちょ、待っ…」
一方の静雄は地元とはまた違った人の流れについていけなかった。見失うことはなかったが、軽く人にぶつかってしまいながら臨也の後を追った。
十数分後、急に人がいなくなった。静雄は来た道を振り返って呟いた。
「何で、あんなに人がいたんだ?」
「あぁ、多分百貨店でバーゲンと物産展をやっているからじゃないかな。昨日広告入っていたしね」
そう言われれば、頷くしかなかった。静雄もその広告を見た記憶があった。といってもさして興味がなかったので流し見程度だったのだが。
それからは人の少ない道を歩いた。どうやら都庁側へと進んでいるようだった。次第にフォーマルな格好をした社会人たちが行き交い始め、私服の二人が逆に浮き始めた。そして新宿にしては閑静なその場所の一角に、大きなビルがあった。周りのビルに引けを取らず、高層であった。臨也はそのビルの入り口で足を止めた。
「ここ、ですか?」
「うん、ここ」
静雄はもう一度、ビルを見た。周りを見れば、趣向の凝らされたものもあれば、典型的な直立不動のものもある。しかしどれをとってもあくまで「会社」のビルであることに変わりは無い。どう見ても「住居」には程遠いような気がした。
 そうあれこれ考えているうちに、臨也はビルの中へと入って行ってしまっていた。
「っと」
鞄を持ち直し、静雄は小走りに臨也の後を追った。