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【DRRR】はろー*はろー*はろうぃん 【帝人総受け】

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「今年は何か、静雄がいっぱいいんなー」
「そっすか?」

静雄がよくわからずに生返事したことを分かっていて、トムは少し笑った。
このぐらい気にしてなければ、不用意にキレて単に仮装を楽しんでる連中を殴り飛ばすことはないだろう。
ハロウィンの仮装といえば、オバケや悪魔など、恐怖を感じる対象を模することが多いものだ。そこに静雄が多いとくれば、伝説の怪物や化け物と同じレベルで扱われていることに相違ないだろう。
だが全くそんなことに気付きもせず、というか自分の仮装が存在することも大して分かっていない素振りであるのだから、本当に助かった、とトムは肩を下ろす。

「トムさん、やっぱコレ暑いっス」
「我慢しろー、社長命令だ」
「何でこんなことする必要があるんスか?」
「そりゃおめー、社長が銭と祭りと行事毎が大好きだからだべー」

2人は今、揃って光沢のある真っ黒な長いマントを棚引かせながら渋谷の街を歩いていた。そのマントが歩きに合わせて翻るたびに、中の赤いサテン生地がテラテラと光りを反射して見せる。
中は随分と長い襟をした白いシャツ。今は着けていないが、犬歯に装着する付け牙もポケットの中には用意されている。
静雄は赤いベスト、トムは青いベスト。
まるで双子のようにあしらった服装だが、実のところコレは彼らの所属する会社が共通で毎年使っているものであり、今彼らの事務所には似たような吸血鬼が溢れ返っている。

「これ、社長の奥さんと事務の女の子たちの手作りなんだって、知ってっか?」
「……手作りっスか」

そう言われれば、縫い目が歪んでいたり、凸凹が出来たりしていて、激安の殿堂でなら売っていそうな作りの弱さだ。しかしながら、生地にしっかりとしたいい物が使われていて、その印象を与えない。
去年も同じものを着用した静雄は、毎年「絶対にこの格好では暴れるな」と釘を刺さされたことを思い出した。
手作り、と言われれば尚更、ぞんざいな扱いはできない。
何となく体が硬くなるような思いがした。

「はは、しっかしみんな、手ぇ込んでやがんなー」

トムがしみじみと言った言葉に、静雄も周囲を見回した。
確かに、スーツ姿のサラリーマンや普段着の人もいるが、ほぼ同数ほど仮装した連中で埋め尽くされている。黒とオレンジ、コウモリやかぼちゃ、黒猫のモチーフがそこかしこに浮かんで見え、一瞬、目がチカチカする。
サングラスはイメージじゃない、と今朝から事務所で取り上げられた。いつもなら怒るところだったが、仮装に夢中になった女性陣の熱意と迫力に押し負け、気力が抜け落ち、されるがままになってしまったのだ。
サングラスを上げようと挙げた手の行き場がなくて、静雄は額に落ちてきた前髪をかきあげた。
絶対にオールバック、と半ば脅されてハードワックスで上げられた前髪に慣れなくて、ちょろ、ちょろっとたまに落ちてくる髪が徐々にうざったくなってくる。
何で街中がこんな祭り気分なんだ。
別にこの格好したからって、特に意味はねーんだろうが。

「おお、静雄、あそこ見てみ。例のライダーがじゃんじゃんいんべ」

イライラとしてきた静雄の気配を察知し、トムが出来るだけ穏便に気分を反らすことの出来る話題を提供した。
ちょうど少し先に、全身真っ黒のライダースーツ、というかむしろ全身タイツに近い連中が固まって見える。そこだけが何となく黒く蠢いているのでよく目立った。
一目で首なしライダーのコスチュームとわかるあたり、よく出来たつくりだ。

「あ。隣にいんの、幽の映画のじゃないっスかね」
「おー、ほんとだほんとだ、ありゃカーミラ才蔵だな。あと何だ、ルリちゃんだろ?」

溢れかえる小さなセルティに混ざって、その集団の中には幽の映画衣装や、聖辺ルリの衣装を着た者も集まっていた。
集団の若さから見て、学生の集まりなのだろう。わいわいと写真を撮ったり、観光客に写真を撮られたりしている。何だか文化祭か何かを見ているようで、そこだけ黒っぽいのに華やかだ。
だがその中心のほうに、何だか少し暗く静かな雰囲気のものが見えた。

「……トムさん、あの『スシ喰う、イイヨー』って書かれた青いの、もしかして」
「え、アレそんなこと書かれてんのかよ?すんげーなー、最近の学生は。それサイモンだろ」
「……じゃあ、その横のは」
「横?」

促されて見ようとしてみるが、トムにはそこまでの上背はないし、静雄ほどの視力もない。しだいに仮装した人でごった返してきたサンシャイン通りは、すごい混雑になってきた。
徐々に、その人の多さに静雄がイライラとしてきているのではないかと懸念されてくる。静雄は前方に見えているらしい人影を凝視していて、あまり機嫌が読める表情ではない。

「もしかして、静雄の格好、してんのか?」
「……ちょっと俺…、見てきます…」

ようやく自分が仮装対象に入っていることに気付いたらしい。
出来れば気付いて欲しくなかったな、と思いながらも、一般人に被害が及ぶようなら止めなければならないのでトムも後を追いかける。
普段ならモーゼの十戒で海が割れていく様に似たカタチで人が避けていくところだが、普段と違う格好、サングラスもしていないことで、ここにいるのが池袋の喧嘩人形、平和島静雄であることをみんな気付けないのだろう。
どんどんと人を押しのけながら進む静雄に、時折舌打ちが聞こえる。
しかし振り返った静雄の眼力に気圧されて、ただ怯えたのか、正体に気付いたのか、相手は小さな悲鳴を上げてそそくさと人ごみに紛れた。