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【DRRR】はろー*はろー*はろうぃん 【帝人総受け】

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「………っええええええええええ!?」

叫んだのは、帝人ではなく、帝人の幼馴染やクラスメイト達だった。
当の帝人本人は一瞬何が起きているのか理解できずに固まっている。
トムも何と返答すべきか悩み、完全に素で、わずかにウキウキとした表情の後輩に対して何を言うことも思い浮かばなかった。
一瞬、沈黙に固まった場。
そこに突然、人を馬鹿にした響きの声が届く。

「ちょっとシズちゃん、何ソレ、お持ち帰りとかw 君その意味わかって言ってる?」

ひょいと、突然現れた真っ黒な2本の腕が、帝人を後ろから抱き寄せる。
静雄にも会いたくなかったが、この人に一番遭遇したくなかったのに、と、帝人の表情が曇る。
きゅうきゅうと後ろから抱きしめてくる腕は、楽しそうに声を弾ませて笑う。

「っていうか吸血鬼ってw 確か去年も会社全員それだったよね。シズちゃん俺去年も言ったけど、ソレほんと似合わないよ。だって普段からただの化け物だしー」
「………ィイイイ―ザァァァ―ヤァァァァ――ッ!!!!」

臨也の登場に、喧嘩は自重しようとしていた静雄の理性は簡単にブチ切れる。
手近に何かぶん投げられる物がないかわずかに目を巡らせ、巨大なジャックランタンを掴んだ。

「こんの、ノミ虫がぁああああ!!」
「わー、わー!!ちょ、静雄さん待って待って」
「頼むから静雄、その服で暴れんのだけは止めて!!」

まだ臨也の腕の中にいた帝人が慌てて手を振る光景に、静雄の腕がピタリと止まる。
そこにトムが上げられたカボチャを掴んで止めに入った。これで服をボロボロにして帰ったら、社長はともかく、社長夫人や事務の女の子たちに何を言われるかわからないのだ。
臨也はそれを見越して、イイ気味、と言いたそうに口の端を引き上げる。

「あはははは、シズちゃん今日は…」

得意げに話し始めようとする臨也の背後に、青いラインの入ったハッピ姿が踊る。

「ちょっとスンマセンっ!!」

少しも謝罪する気のない謝罪とともに向かってきたのは、回し蹴り。
あわや当たるかというギリギリのところで、臨也が視界から消え、まんまと避けられる。空振りに終わった蹴りは帝人に当たることはなく、その数歩離れたところにまた黒い影が現れた。その動線上でバサバサという音とともに羽が数枚落ちてくる。

「……羽?」
「ああもう、何すんのさ紀田正臣くん!ちょっと衣装が取れちゃったよもう!」

臨也が上機嫌ながらも非難の声を上げる。
帝人の腕を引いて学生集団の中に引き戻そうとした正臣は、その相手に向かって心底嫌そうな顔をした。

「…フルネームで呼ばないで下さいよ。つか、羽がバサバサしてんのは俺のせいじゃないんで」
「……あの、臨也さん、その衣装なんなんですか?」

正臣の背後に引き込まれた帝人は、ややげんなりしながらも臨也の格好についてツッコミを入れざるを得なかった。そうしないと、後々でさらに面倒なことになりそうな予感がヒシヒシとしているのだ。
すぐに表情を変え、嬉々として両腕を広げた臨也の背後で、またバサリと重苦しい風の音がする。

「あ、気になる?そうだよねえ、今日の俺は一味も二味も違うよ!何たって今日は『ルシファー』スタイルなんだからね!!」

そう言って得意げにポージングする臨也は、あまり普段と変わらないファー付きのコートと黒のズボンを着用している。ただその上着のカタチは、背後から見るとツバメの尻尾のように裾を二股に分かれている燕尾服使用になっているし、足元は先の尖って反りあがったブーツにズボンを入れており、普段と違うと言えば違う。
ただ、シャツをズボンにインして、ズボンをブーツにインして、という部分はおしゃれなのかそうじゃないのか微妙なラインだ。
そしてそれを残念なモノ、に置き換えてしまうものがその背中と頭にくっ付いていた。
頭には、ヤギの角を模したカタチのひね曲がった2本の角がにょきりと生えている。恐らくはカチューシャのようなもので止めているのだろうが、見た目だけで重そうだ。
そして、背中に背負い込むようにして装着されていたのは、肩から腰にかけて大きく伸びる真っ黒の翼。無駄に精巧な作りで立体的な翼は、一枚一枚丹念に貼り合わされた黒い羽で構成されているようで、くるりと1度ターンしてみせると、2枚ほど剥がれ、宙を舞って風に流されていく。

「どう?全天使の長であった者が、自分が神に成り代われると傲慢になり反逆した罪によって地獄へと堕とされ、地獄の冥王となった堕天使ルシファー。まさに俺にぴったりじゃない?まあ、俺は神になりたいだなんてそんな願望はコレっぽっちもないし、神も天国も地獄も、そんなこと1つも信じちゃいないけどね!それに俺だったらきっともっと上手くやれるよ!!」

だったら言うなよ、と言いたいところだったが、周囲に人間は全員そのセリフを黙殺した。
下手にツッコミを入れて更に何か語り始められたり、小馬鹿にされたりするのは望まない事態だったし、何よりも今、この恥ずかしい中2病患者の知り合いであると思われたくなかったのだ。
ただ残念なことに、この男は顔見れば相当の男前であったし、スタイルも良いので、そんな状態でも妙に似合っている。そこも酷く周囲から引かれる所以でもあったのだが。
相変わらず、バッサバッさと得意げに翼を揺らす上機嫌な臨也が、その痛々しい空気をあえて読まずに帝人を指差した。

「っていうか帝人くんの方がホント、有り得ないよね。いくらシズちゃんが化け物だからって、シズちゃんコスってwww」
「……僕も本人の前ですることではないと思いますが」

貴方よりは数倍もマシだということに気付きました、という後半の言葉を帝人は冷めた視線で腹の中に留めておいた。
極力何も関わらないほうが、この人の相手をするのにはいい、とよくわかっているのだ。