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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記6

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(それにしても・・・)
青蛙神は天狗の隠れ里への道すがら、改めて洩矢諏訪子・八坂 神奈子の両神について考えていた。
(神奈子様が最初に見せた力も凄かったし、諏訪子殿が我を抑え付けた時の力などはもう我の考えうる領域の遥か上を行っていた・・・それに・・・)
青蛙神は早苗が引いている大きな荷車を見た。荷台には酒がなみなみとつまった大きな甕(かめ)と、こちらもお粥がたっぷりはいっている寸胴鍋、そして食材も多く積まれている。一般的なのと比べて倍はあろうかと思われるほどの大きさの荷車に、今挙げたものが大量に載せられているというのに、早苗は神奈子たちと談笑しながら軽々と引いている。(倉からの帰り道の時も思ったことじゃが・・・)
なぜ早苗がこんな殺人的に重いであろう荷車を軽々と引けるかというと、これは諏訪子の力で荷物が本来持つ重さ、言い換えれば荷物が生み出している重力を抜き取り、自分の体の中に移しているのである。重さだけを消すことも諏訪子にはできるが、それは少し面倒くさいし、このくらいの重さなら諏訪子にとってなんでもない。
(諏訪子殿はまるで瑣末事であるかのように軽くやっていたが、この力一つを取っても、使いようによっては恐ろしいものになる・・・しかも、これに限らず、諏訪子殿も神奈子様も自分の神力は様々なことに応用が効くらしい)
青蛙神は考え込むあまり知らないうちに立ち止まっていた。
「ですよねー、青さんはどう思いますか?・・・って、あれ?青さん?」
早苗が青蛙神に話を振ろうとして、ふと自分たちの傍にいないことに気付いた。
「おっ?そういえば青が全然話に入ってこないけど、どうしたんだい?」
「青蛙神はむこうで考え事をしています(笑)」
「なんだい、またかい・・・まぁ気持ちは解らんでもないけど」
神奈子たちがこの幻想郷に来た時も、顕界との大きな違いに驚き、また全ての存在同士の距離の近さにも驚かされた。そして、なぜここではそうなのかを必死に理解しようとした。青蛙神もそんなことを考えているのだろうか。神奈子は自らの例を考えそうだと思ったが、青蛙神は少々違っていた。
「おぉ~い、青ちゃ~ん!何してんの~!遅れてるよ~!」
諏訪子はのん気に 青蛙神に手をブンブンと振っている。青蛙神は黙ったまま三人の所へ近づいて行った。
「で?こんどは何を考えてたんだい?」
神奈子は自分の考えは一先ず置いておいて、苦笑しながら訊いた。
「・・・周りの木々が、我々のことを避けています・・・」
そう、実際四人は地ならしはおろか、獣道にすらなっていないような道無き道を進んでいる。それこそ、木々が生い茂っているところを。本来人一人が通るのも難しいのに、大きな荷車など通れるはずがない。それなのに、四人が通る道にある木々の悉くが、まるで動物であるかのように自ら動き、彼女たちに道を作るように場所を空けるのである。
「これも、御二方のどちらかがやっているのですか?」
実際目の当たりにしなければ解らないが、これは相当異様な光景だ。本来木の母体を支えるはずの太い根がひとりでに地表に現れ、それを足にして歩き、適当な場所で待機している。そして彼女たちが通り過ぎると、もといた場所へ戻り、そこでまた根を埋める。まるで何事もなかったかのように。
「あぁ、これはあたしの力っていうか、あたしがやってるんだよ。山は、あたしと凄く相性が良い・・・と言うより、山はあたしそのものなんだ。だから、山にいる動物以外なら、たいていのものは操れるよ」
そう言うと、神奈子は少し得意げに胸を張った。・・・なかなか良いものを持ってるねぇ・・・おっと失礼。
「 神奈子は元々風雨を司る神だったんだけど、まぁいろいろあって、それぞれの山に必ず一人はいる守山神(もりやしん)の大聖霊(だいしょうれい)たちから 物凄い信仰を集めたんだ。それ以来、各山の大聖霊が代変わりするたびに、役目を終えたその子たちは神奈子と同化することを望んだ」
「同化?」
青蛙神は諏訪子の話の内容が急に変ったので、思わず聞き返した。
「うん。まぁ言葉通りの意味なんだけど・・・」
「ちょっと諏訪子、あたしのことなんだからあたしに喋らせなさいよ」
神奈子は頼んでもいないのにペラペラと喋り始めた諏訪子を制して、一呼吸入れた。
「ふぅ・・・。この話は早苗も初めてだね、いい機会だし、私が山坂の神になった経緯を話しておくよ。今はお出かけの途中だし、そんな大した話じゃないから、すぐに終わるけどね 」
早苗も自らが仕える神様のルーツを聞くとあって、車から一旦離れて真剣に聞く姿勢を取った。