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妖鬼譚

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「………俺は、ホンマに鬼門なんやろか?」

血を吐く様に呟かれたそれは、今の謙也の中に渦巻く様々な想いを完全に集約していた。
その渾身の問い掛けにどう答えるべきなのか……一瞬の間に様々な事を逡巡した光は、今の俺にはこう言う事しか出来んと、ぎゅっと拳を握って決意を固めて自分の想いを言葉にする。

「最初、俺はアンタを鬼門やと信じてました。俺は今迄一度も鬼門の正体を間違えた事はあらへんから」
「そ、っか……そうやな、鬼門退治の専門家のお」
「せやけど」

と、謙也の自虐的とも言える台詞を遮るように言葉を挟んだ光は、そこで一度言葉を切ると項垂れる謙也の手を両手で包み込むように強く握り締めた。
その痛い程に強い手の力に顔を上げると、光の真っ直ぐな眼差しが謙也をしっかりと捉えていた。

「謙也さん、貴方が何者であろうと、貴方は『忍足謙也』です。正体なんて関係無いっすわ。俺は、『忍足謙也』を何が在ろうとも、必ず護り続けます。せやから……貴方は俺を信じて下さい」
「財前……」

真摯な光の言葉に、謙也の瞳からは自然と一筋の透明な雫が零れ落ちる。
そのまま流れ続ける涙を拭いもせず、謙也は小さく微笑みを浮かべてみせた。

「……何や、告白受けたみたいで恥ずかしなるわ」
「そうや、って言うたらどうします?」
「えっ!?」

その光からの返答に、謙也の頬に微かに朱が走る。だが、しかし。

「光!!!!」

二人の間に流れ始めていた柔らかな空気を引き裂くように、緊迫した声を上げて襖を乱暴に開けて離れへと飛び込んできたのは、小春とユウジの二人だった。
彼らは揃って緊迫した表情を浮かべて、自分の武器である狙撃銃と大量の符を手にしていた。

「大変や、光!!」
「何ですかいきなり……此処は謙也さんとその家族が居るんやから、静」
「えぇからこっち来い!!」

と、焦るユウジに腕を引かれ、部屋を出て大分距離を置いた廊下迄行った処で足を止めると、小春が珍しく焦った声を上げた。

「光、鬼門がこの屋敷を襲って来たわ」
「な、何やてッ!?」

その言葉に、光は眼を剥いて驚きを顕わにする。
普段ならば、自らの持つ能力で鬼門の気配を嗅ぎ取る事が出来る為、光は今迄鬼門からの奇襲を受けた事はなかったのだ。
だが、鬼門の気配を纏う謙也の傍に居続けたが故に、本人も気付かぬ間に鬼門の放つ臭気に対して彼の『鼻』は徐々に麻痺してしまっていたのである。
更に此処は強固な結界の働いている鬼門の天敵である鬼狩の総本山ともいえる屋敷を、彼らが襲撃するという事は、常識では決して考えられなかったのだ。

「その鬼門って、まさか……」
「白石かッ!?」

光の言葉を遮る様に鋭く叫びを上げたのは、部屋の中にいた筈の謙也だった。
わざわざ彼にこの話を聞かせない為に小春達が場所を移動した上で報告をしてくれたのだが、どうやら謙也はその後を付いて来てしまっていたらしい。

作品名:妖鬼譚 作家名:まさき