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妖鬼譚

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「ホンマに何やねん、あのガキは……臭う臭うって、まるで人を不潔なモンみたいな扱いしよって」

日も暮れ行く中、謙也は朝の出来事を思い出して一人苛々としたまま下校していた。
次に会ったら絶対に謝罪させてやろうと、昼休みにわざわざ学校を抜け出して制汗剤を買って、全身に振り掛けまくった上で放課後練に臨んだ謙也だったが、肝心の少年は何やら用があるらしく、その場に顔を出す事は無かった。
そんな中、ふと首筋に突き付けられた冷たい鋼の感触を思い出し、背筋がヒヤリとする。

「……にしても、あれ、銃刀法違反やったりせんか?」

法律に違反しとる場合、警察に通報すればええんかな、等とあの少年を訴える算段を思案していた謙也だったが、その考えを中断する事になる。何故ならば、突然横手の道よりフラフラと頼りなげな足取りで中年の男が謙也の目の前へと飛び出して来たからだ。

「う、うぅ……」
「おい、おっちゃん、どしたんや?腹でも痛いんか?」
「……せ…」
「へっ?」
「オ前ノ、肉ヲ寄越セ……ッ」
「な、何やてッ!?」

目を見開く謙也の目の前で蹲っていた筈の男の姿が、みるみるうちに変貌していく。
身体の筋肉は二倍近くに膨れ上がってゆき、普通の色をしていた筈の肌は青紫に染まっていく。そして一瞬で伸びてざんばらになった白い髪に覆われた頭からは、天に向かって二本の捻れた角が生えてきていた。黄色く濁った双の眼が目の前に立ち竦む人の姿を捉え、ニヤリと乱杭歯を剥き出しにして笑みを浮かべる。

その恐ろしい姿は、まるで漫画等の中で見た『鬼』の様や、と眼前の光景を何処か別の世界の出来事の様に感じていた謙也だったのだが。

「寄越セ……」

ドカン、という派手な破砕音。謙也の立っていたすぐ横の壁に大きな穴が空く。
その音に我に返った謙也は、自慢の足を使って全速力でその場から逃げ出す。だが、人ならぬ物から逃れるのには絶対的に速さが足りなかった。全身の筋肉を発条の様に利用して跳躍した鬼は、一息に謙也を飛び越えると、その進路を遮るように着地をした。

「血ヲ……肉ヲ、寄越セ……」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ」

鋭い爪を頭目がけて振り下ろされ、恐怖に目を閉じる事すら出来ず、自分の生が終わるのだと絶望を感じた次の瞬間。

――ヒュン。

そんな軽い空気を裂く様な音を耳が捕らえた一拍後。突如、異形の肉体は綺麗に左右真っ二つに割れて、ゴトリと地面の上へと崩れ落ちた。
そしてその背後には、身の丈程もある長い日本刀を振り下ろした体勢のあの黒髪の少年が立っていたのだった。
作品名:妖鬼譚 作家名:まさき