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妖鬼譚

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「金ちゃん、まだそんな筈はなかとよ」
「せやけど、だって今……」
「それに、言われとらん事、勝手にしたら毒手ば白石が言っとったの、金ちゃんは忘れたと?」

と、青年が言うと、金太郎は毒手は嫌やぁぁっ、と、悲痛な叫びを上げるなり、恐怖の表情を浮かべて急に黙りこくってしまう。
そのやり取りを不思議そうに見ている謙也に気付いた青年は、慌てたように自己紹介を始めた。

「あ、こっちでごちゃごちゃしとって申し訳なかね。俺は金ちゃん、この子のお目付け役で千歳千里ば言うとよ」
「あ、えっと、俺は忍足謙也言います」
「忍足くん、金ちゃんの探し物見付けるのを手伝ってくれて助かったたい」

と、千歳はニコリと人好きの笑顔で礼を述べる。その春風の様な穏やかな笑みと共に名を告げられた謙也は、先程金太郎の名前を聞いた時と同様に、記憶の奥底の何かが騒めく奇妙な感覚を覚えた。
この不可思議な感覚の正体が知りたくて、謙也は失礼を承知で疑問を口にした。

「なあ、千歳、やっけ?いきなり変な事言うようやけど、アンタ、前に何処かで会った事あらへん?」
「んー……残念ながら、俺が忍足くんに会うのは初めてたい」

と、千歳は困ったように笑いながら謙也の言葉を否定した。それを聞いて、やっぱ気のせいは気のせいやな、と謙也は一人頷いてみせた。
よく考えてみれば、自分の背負っていたテニスバッグには『KENYA.O』と書かれた名札が下がっていたし、金太郎が提げていた鞄には『遠山金太郎』と名が縫い込まれていたのである。お互いにそれを目にしたから、あんな風に名前を呼んでしまったのだと、そう自分の感じた違和感に結論付けたのである。
と、そこにタイミング良くピリリリリという電子音が高らかに鳴り響いた。

「忍足くん、何か携帯が鳴っとるばい」
「あ、小石川からや……って、練習遅刻してまう!!ほな、金ちゃんに千歳、またどっかで会ったら今度はゆっくり話しよなー」

そんな言葉と笑みを残して、謙也は流星の様にあっと言う間に二人の前から走り去ってしまった。
それを千切れそうな位に全力で手を振って見送った金太郎は、隣で同じく手を振っていた千歳に向けて疑問を投げ掛けてみせる。その表情は先程迄の見た目相応の子供らしい顔ではなく、何処か大人びた物である。

「なぁ、千歳。あのケンヤ、ホンマにケンヤやないん?」
「……俺にははっきりした事は言えんとよ。でも、俺はあの子は謙也くんだと思うばい」
「ワイもそう思う。ワイと千歳がケンヤに会ったって白石に話したら、どんな反応するんかな?」
「うーん……飛び跳ねてビックリすると俺は思うとよ」
「ワイは嬉しくて泣くと思うんやけどな」
「そうなったら、それは珍しい物が見れるとね」

と、二人は顔を見合わせて笑った次の瞬間、忽然とその場から姿を消したのだった。
作品名:妖鬼譚 作家名:まさき