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降伏宣言

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「臨也さんがある特定の人の驚いた顔が見たいのって、どんな時ですか?」
本格的に臨也が帝人に興味を持った時と同じどこまでも深くまっすぐな瞳を少年は青年に向ける。
今回の獲物は俺なのか、と臨也はゾクゾクしながら思う。

「驚いた顔かい?俺はどんな人でも驚いた顔は好きだね。その驚きを自分が作っているとしたら倍は楽しい。驚いた後にするリアクションが俺の思っていないものだったら、それは楽しくて楽しくてしょうがなくなるよ」

「そうですか。じゃあ、ある特定の人物のいろいろな表情を見たいと思うのはどんな時ですか?」
「今度は色々な表情かい?俺は人間が好きだからどんな人のどんな表情もいつでも見たいと思ってるよ」
「僕は、ある特定って言ってるのに、臨也さんにはそれは伝わらないんですね」

帝人の顔が臨也の顔に再度近づく。
そして、そのまま二人はキスをした。
今度のキスは、さっきのとは違い、長く熱いものだった。
帝人の舌が臨也の口腔に入り込み、二人の舌が絡みあう。
唇が離れて、飲みきれなかった唾液を帝人は臨也の顎に舌を這わせて舐め取る。

そして、またあの獲物を見つけた鷹のように深くまっすぐな瞳を携えて少年は青年に言った。
「今度は驚きながらも、少し感じている表情ですね」

本当に、思ってもみないことをしてくれる。
臨也は帝人を見て今度は何をするのだろうと期待する。

「僕は、周りの人が笑顔でいてくれればいいって思うんです。家族や友人、近しい人なら近しい人ほどそう思います」
「帝人君はそうだろうね」

「でも、臨也さんに対してはそう思わないんです」

「へぇ?」
「臨也さんは笑顔が通常ですよね。それを壊したくなるんです。特に、他人に見せないような顔を見たくなります。驚いた顔、怒った顔、戸惑った顔、泣いた顔、切ない顔、悲しむ顔、我慢した顔、感じた顔…。どんな表情でもさせたくなるんです」

そういえば、泣き顔なんて幼いころ以来、誰にも見せていないのではないだろうか、と臨也は帝人の言葉を聞いて思った。
どんな時に自分は泣きたくなるのだろうか。
例えば、帝人に別れを告げられたなら?
…きっと、泣かないだろう。冷酷な笑みを浮かべて帝人を監禁する自分を思い浮かべる。

「臨也さんは、初めて僕に告白した時のことを覚えてますか?」
「もちろん覚えてるよ。何月何日かも正確に言えるほど」
「それは言わなくてもいいです。臨也さんはその時、僕の臨也さんに対する感情を変えてみせるって言いましたよね」
「うん。言ったね」

「僕の今の臨也さんの感情は、さっき言った通りです。臨也さんが誰にも見せない表情を僕だけには見せて欲しい」

「帝人君、その言葉はまるで告白みたいだね」
少しの期待を持って、しかし、あまり期待しないように自制しながら青年は少年を見つめる。

「その感情は恋なのだと、僕は思います」
告白してるんですよ、と少年は青年を見つめ返して言う。

臨也は見つめてくる瞳が変化していくのを見た。
深くまっすぐな大きな瞳が優しくやわらかく細められた。

「その笑顔は初めて見ました。臨也さんは笑顔の種類がたくさんありますけど、その笑顔はきっと僕にしか見せませんよね?」


自分は今、どんな顔をしているというのだろうか。
鏡を見てもきっと見ることは出来ない顔だろう。
それでいいと思う。
知っているのは帝人だけでいい。
そして、これからも帝人以外は見ることが出来ない表情なのだと臨也は知っている。


作品名:降伏宣言 作家名:彼方