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【フェルテス】ベッドならどこでも眠れる街、第二章にて【ダニル】

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 同僚であるあの巨漢は小さな主にこの上ない忠誠を誓っているが、だからと言って子どもの夜更かしを見逃せるほど融通の利く男でもない。帳簿付けを言い訳にごまかしごまかし起きていたエルオの姿を思い描くのは、ひどく簡単な作業だった。そして痺れを切らしたボディガードに強制的にベッドへ連れて行かれたと。すれ違いとは運のないことだ。
 しかし小言を聞かずに済みそうなのはありがたい。ありがたいついでにインク壺に蓋をかぶせて、ダニルはランプを手に取った。私室へと続く扉の前に立って、初めて違和感に気づく。
 なぜか扉が半開きである。

 そして冒頭へ戻る。
 ダニルにあてがわれたベッドの上で、何を思ったかフェルテスがぐっすり寝入っていた。無論、かれの部屋はカウンターを挟んで向かい側である。
 確かにかれはベッドと見ればどこでも寝込んでしまう悪癖の持ち主だが、なにも自室がある場所でまでそんなことをする必要もないだろうに。
(明日の探索へのお誘い……ってとこでやすか?)
 フェルテスとダニルがここに来るまでの間は五分もなかったはずだが、待っている間に力尽きたのだろうか。フェルテスの疲労困憊ぶりをじっくり観察した身としては、想像すること自体は難くない。
「しっかし、どうしたもんでやしょう……」
 フェルテスを起こさないよう、ごくごく小さな声で呟く。
 よほど疲れているのか、フェルテスはダニルがその傍らに膝をついても呼吸一つ乱そうとしない。生きているのか不安になるくらいひっそりとした呼吸を繰り返し、ハンターにあるまじき無防備さでぐっすりと眠り込んでいる。これが普段のかれならば、ダニルの気配を察した時点で飛び起きていてもおかしくないだろうに(もっともダニルがフェルテスの部屋を訪ねたことなど今まで一度としてなかったので、これはただの推測にすぎない)と、勝手な想像をめぐらす。
 フェルテスは常に浮かべている冷えきった無表情ではなく、あどけない青年の青年の顔をしていた。
 その表情と、肌寒さに丸めた手足のせいか、普段よりいくらか幼く見える。そういえばダニルはこの男の実年齢を知らない。