入れ替われれれ!!
中身が杏里だと知りはしない静雄は臨也の声に即座に手近にあったものを投げたのだ。
オレンジの液体、四人が飲んでしまった入れ替わりの原因物質が宙へ散乱する。
遅れてガラスの砕ける音。
テーブルの上に置かれたものが全てグチャグチャに床を汚す。
被害は床だけではないソファも新羅の白衣も汚して部屋は地獄絵図の有様だ。
「シズちゃんさぁ、治療を頼みに来たくせに何その態度。暴君すぎでしょ」
新羅にソファを投げつけようとする静雄にセルティが待ったをかける。
黒い影で作ったロープで静雄を縛る。
セルティの行動を予期していなかったのか足に怪我をしているせいか、静雄はバランスを崩して転倒した。
床はガラスが散らばっている。
倒れた静雄に杏里は心配そうに「大丈夫ですか」とたずねる。手には刀が依然ある。
「帝人君、ソレ、野獣だから。近づいちゃだめ」
新羅が杏里の身体を後ろから抱きしめる。
セルティは若干、本当に少しだけ胸に痛みが走る。
帝人が心得たように「僕はいつだってセルティ一筋だよ」と部屋の隅で大声を出す。
顔があったら泣いてしまったかもしれないとセルティは思いながら『ありがとう、新羅』とPDAを掲げる。
胸があたたかい。
「なにが、どうなってやがる?」
もっともな疑問を静雄が口にする。
縛られていることで少し落ち着いたのかもしれない。
「んー、見てわかんないの? シズちゃんもさぁ、友達がいがないよねぇ。新羅と俺の違いもわからないなんて」
「シズちゃんってば、単細胞・・・・・・っ」
新羅の声に続きを静雄が口にする不思議。
自虐ネタでもあるまいに、軽やかな自分自身への罵倒は唐突に途切れる。
部屋の空気が止まる。