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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記7

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「我の名は青蛙神。元は顕界の大陸にいた霊獣じゃ。ある仙人と共に民草に功徳を説いて回っていた」
心なしか、喋り方がたどたどしくなっている。
「はじめまして!!青蛙神様。私の名前は犬走 椛。ここ天狗の里で実働部隊『狗賓衆』の筆頭を務めさせていただいています」
まずは椛が元気よく返した。返してはいるが、椛には霊獣というものがいったいどんな種族なのかは解っていない。彼女は真面目で努力家であり、武の才能も素晴らしいものがあるが、物知りではなく、頭も常人レベルである。
「霊獣ですか。私はてっきりカラ傘の親戚か何かかと・・・」
文は青蛙神の足元を見ながらそう呟いた。青蛙神にはしっかりと聞こえていた。
「聞こえておるぞ、お前。我をあんな低級の妖怪と一緒にしないでもらいたいものじゃな。それよりも、お前の名前を教えるのじゃ」
さすが神格・青蛙神。この程度では少しも不機嫌にならない・・・か?
「(あの喋り方は作っているのかな・・・)私の名前は射命丸 文。幻想郷一有能な新聞記者にして、幻想郷最速の女です。」
自慢げに言うでもなく、それが事実であるかのようにさらっと言った。幻想郷で一定以上の力を持つ者には、ちょっと変わった奴が多い。文もご多分に漏れず、だ。
「ほぅ・・・幻想郷最速とな・・・随分な自信じゃの」
大口をたたくようなタイプが嫌いな青蛙神にとって、まさにストライクな人物のようだ。「いいえ、自信とかじゃなくて、事実です。ところで、あなたの着ているその服は、あなたのセンスですか(笑)」
「きっ、貴様!!」
自分のアイデンティティーを鼻で笑われて、青蛙神はカッとなって文に飛び掛かろうとした。しかし、当然神奈子に止められる。
「はいはい、もう止めな二人とも。青もちょっと落ち着け」
神奈子に首根っこを掴まれ、片手で持ち上げられた青蛙神は、それでもガルルと唸りながら文を睨みつけている。
「文もどうしたの?いつもだったらそんな意地悪なこと言わないのに」
椛に抱きついていた諏訪子は今度は文に正面から抱きついて、上目使いに文の顔を見ながら尋ねた。諏訪子には抱きつき癖がある。
・・・正直これは・・・可愛いねぇ・・・おっと、集中集中。
「・・・すいません。ちょっと今日嫌なことが結構重なってて」
折角の休みなのにと、文は溜息をついた。
「青蛙神さんもすいませんでした。お客様に不快な思いをさせてしまって」
反省しているのか、青蛙神に対してちゃんと頭を下げて謝った。
「おっ?おぉう、我も少し大人気なかったな。申し訳ない」
「意外です。文さんって、どんなことがあっても飄々として受け流してしまうような方だと思っていました」
つい先ほどまで持ってきたお土産の確認をしていた早苗が急に話に参加してきた。
「あぁ、こんにちは早苗さん。いやぁ・・・わたしも普通の鴉天狗ですから」
さっきと言っていることが違っているが。あの物言いは機嫌が悪かったからか。
「いったいなにがあったんですか?」
「いや、もうその話は勘弁してください。もうホントにいい加減天魔様の所に御案内します。もう待ちくたびれているでしょうから」
そう言うと、文は聳え立つ絶壁に向かって歩き出した。
「天狗の里も久しぶりだねぇ」
「何か新しい発明品とかあるかな?」
「そう言えば、私は天魔様から頂いた電気調理器の点検をどなたかにしていただきたいのですが」
皆が思い思いに話しながら絶壁に向かって歩みを進めている。このまま進めば一分もしないうちに岩壁にぶつかってしまう。初めて来たので、もちろん勝手を知らない青蛙神が止めに入る。
「ちょっ、ちょっと皆さん、待ってください!!」
先行している人たちの一番後ろで荷車を引いていた早苗が青蛙神の方に向きなおった。「どうかしましたか?青さん」
「どうかしましたかじゃと・・・まさか、天狗の里はこの岩壁の上なのか?」
どう低く見積もっても十メートルはある。目的地に着いたと言っておきながら、まだこんな難関があるとは。こちらの世界に来る直前は既に幽体になっていたので、空を飛ぶこともできたが、実体を取り戻した今、青蛙神は自分では空を飛ぶことはできない。他の人たちは見た感じ空を飛ぶことなんて簡単だと言いそうな人たちばかりだ。青蛙神としても、身体能力はそんじょそこらの妖怪を遥かに凌いでいるという自負はあるが、この絶壁を登るのは少々骨が折れそうだ。
「あぁなるほど。大丈夫ですよ。天狗の里はこの岩壁の内側になります」
早苗は得心したようにうなずくと目の前の岩壁を指さしながら言った。
「この岩壁は一部分にちょっとした術を施しています。一見何の変哲もなく見えますが・・・」
青蛙神の声が聞こえていたらしく、そこまで言うと、文の体が岩壁に溶け込むかのようにすり抜けていき、見えなくなった。
「!!?」
青蛙神は岩の一部分が動いて入口ができるというような想像をしていたので、これには面喰った。
「こうやってすり抜けることができるんですーー!!」
岩壁の向こう側から文の声が聞こえる。
「私たちは天岩戸と呼んでいます」
早苗は楽しそうに微笑んでいる。
「さあ、行きましょう」
長ったらしい話やひと悶着も終わり、守屋ファミリー御一行はようやく天狗の隠れ里に到着した。・・・本当に長かった・・・。