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いつまでも、君が怖い理由

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「………獄寺くんのバカ」

小さく呟いたそれは、耳の良い君には勿論聞こえたみたいで。
ビクリと跳ねる身体に「直接守って欲しいんだよ」と告げれば、はっとしたような声が了承の返事をした。

俺はずるいね。
君の"ボスにならない"なんて断言しておきながら、都合の良い時はボス面をしている。

(―――ごめんね、獄寺くん)

ポスリと横にいる獄寺くんに寄りかかる。
俺が口に出して謝れば、きっと君はもっと気を遣ってしまうから。伝わればいいな、と思いながら。

「十代目」

獄寺くんの手が、柔らかく俺を撫でていく。気持ち良いな、もっと、もっと撫でて欲しい。

「俺、十代目に猫の耳があっても、尻尾があっても関係ないって思ってました。十代目は十代目だし、俺が尊敬すべき方には変わりないって」

「…うん」

「でも、今は十代目に耳と尻尾があって良かったって思います。俺、バカなんで、十代目が考えている事がわかんねー時があるんです。でも、今は俺をバカだといいながら絡んでくる貴方の尻尾や、寄りかかりながらも振るえる耳が、貴方が俺を嫌いじゃないって教えてくれます。撫でる勇気を、下さるんです」

獄寺くんはバカだ。
頭はいいのに、本当にバカ。

「俺が、獄寺くんを嫌いになるなんて…あるわけないじゃないか」

こんな簡単な事も、分からないなんて。

「すいません、十代目。…もっと、撫でてもいいですか?」

「逆だよ、獄寺くん」

「え?」

「……撫でてくれなきゃ、俺機嫌治さないからね」

「…っ、ハイ!」

自分でも顔が赤いのが分かる。
でもね、俺にはもう、君の耳も尻尾も見えないけれど。君が俺と同じくらい照れている事くらい、分かるんだから。




優しい手のひら。
宝物みたいに俺に触れてくれる君の体温。

(好きだなぁ…)

勘違いしそうになる位に優しい、獄寺くん。
獄寺くんの"特別"は、俺のそれとは違うけれど。


それでも、俺は、君が好きなんだ。






にゃんこと!/end


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作品名:いつまでも、君が怖い理由 作家名:サキ