いつまでも、君が怖い理由
4
始業のチャイムを無視して、空き教室に入り込んだ。
ドキドキとうるさい心臓は、中々収まりそうにない。
「じゃあ、その…どうぞ、十代目」
「う、うん」
なんかこれ、逢引とかいうヤツっぽくないかな…?
こっそり付き合ってる二人が、誰もいない教室でやらしい事してるみたいな…って、俺のバカっ!何考えてるんだよ!獄寺くんに失礼じゃないか…!!
「十代目…?」
「うっ、ううん。ごめん、じゃあ…えっと……撫で、マス」
「どうぞ、お好きにしてください」
うう…だから、その笑顔と一緒に言われると、照れくささが増すんだけど…。
それでも、誘惑には勝てずそっと耳に手を伸ばす。ふわふわな手触りと、それからさらさらと指から逃げていく獄寺くんの髪。
(―――気持ち良いなぁ)
床に座る獄寺くんと、覆いかぶさるように膝で立つ俺の体勢は、もしかしたら何も知らない人が見たら怪しむ体勢なのかもしれない。でも…もういいや。くすぐったそうに目を閉じてる獄寺くんを見てると、そういう事が全部どうでも良くなってくる。
(…なんか、獄寺くん本当に犬みたい。かわいい)
「十代目ぇ」
「…っ、な、何?」
「これ、気持ち良いですねー」
ふにゃりと笑う獄寺くん。
可愛い。怖くてカッコいい人だとばかり思ってたけど、一度そう思うと俺は心の中で何度も繰り返すようになっていた。
「そ、そう?」
ドキドキする。
心臓が煩くて、指先が緊張で震え出す。
「はい。…俺も、十代目の事撫でていいですか?」
「な…んで?」
「俺が気持ちいい事、十代目にもやりたいっす!」
そうやって君が笑って、俺が断る事が出来た事なんてあっただろうか。
「…うん、いいよ」
ホントは、スゲー恥ずかしいけど。
「はいっ!」
君が、そうして笑ってくれるなら。
作品名:いつまでも、君が怖い理由 作家名:サキ