最高無敵で最愛のお姉さま!@11/27追加
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細く白い手が静雄の腕にゆっくりと包帯を巻いていく。丁寧な仕草に面映ゆさを感じながらも、静雄はその手の動きをじっと見つめていた。
「痛くありませんか?」
「い、いや、別に平気だ」
「そうだよ姉さん。静ちゃんなんて体力馬鹿で筋肉妖怪なんだから手当てするだけ無駄無駄。むしろ傷口に塩塗り込んでやればいいよ、そして死ね」
「んだとゴルァッ」
「ここで喧嘩するなら、僕帰りますけど」
「「すみません」」
正に鶴の一声。新羅はこみ上げる笑いを抵抗なく受け入れた。
「あはははっ。さっすがですね帝人さん!猛獣二人手懐けるその手腕、帝人さんの童顔っぷりと同じ位変わってなくて安心しました!」
「・・・・・・・・それは褒めてるんですよね、新羅さん」
『もちろんだとも、帝人。相変わらず可愛くて何よりだ』
「セルティさんまで・・・・」
ううっとうなだれる帝人に、新羅は目を細めた。
背中に臨也を引っ付けて、静雄の手当てをする帝人という光景は学生時代よく見ていた。変わったところといえば、帝人にべったりと離れない二人の図体がでかくなってるのと、帝人の髪が長くなったことぐらいだろう。何年経っても、何が起きても、環境が変わったとしても。帝人という存在が居る限り、懐かしいあの日々が鮮やかに蘇る。それは大人になった自分たちに忘れてしまった何かを思い出させてくれるのだ。きっとセルティも同じ気持ちに違いない。久しく見ていなかっただけに、感慨もひとしおだ。
「帝人さんはいつ東京に戻られたんですか?」
「今日の朝です。そのまま臨也さんところに顔を出しに行ったら、波江さんに池袋に行ったって言われて。そこに行ったら行ったで、二人とも相も変わらず喧嘩してるし。・・・・ちょっと呆れました」
「携帯に連絡くれたら飛んできたのに」
「壊れちゃったんですよ、携帯。真っ先に会いに行っただけでも良しとしてください」
肩に乗ってぐりぐりと動く頭を、包帯を巻き終えた手でぺしりと叩く。帝人に遠慮なく甘える臨也に苛つきながらも、静雄は「ありがとう」と呟いた。それをきちんと拾った帝人は、後片付けをする手を止め「どういたしまして」とふわりと微笑む。密かに憧れている(本人以外にはばればれだが)女性の微笑みを久しぶりに、しかも間近で見た静雄はさっと頬を赤らめた。
「?静雄さん、顔が赤いですよ?もしかして熱でも、」
額に手が伸ばされ、見かけによらず純情な静雄はかちりと固まった。柔い手の感触が額に感じ、静雄は自分の血液が沸騰する音が聞こえたような気がした。
「少し熱い、かな」
「や、その、これは、違」
そんなほのぼのとした空間をぶち壊すのが折原臨也という男で。
「静ちゃん気持ち悪い!」
「ッ、んだとクソノミ蟲に言われたねぇぞッ!!」
「煩い単細胞静ちゃんてかもう治療終わったんでしょ。さっさと去れ帰れ仕事しろ」
「あ″あ″ッてめぇこそ消えろや!」
「 い い 加 減 に し て く だ さ い 」
「「・・・・・・・・・・・はい」」
新羅は腹筋が崩壊するかもと危惧しながら呼吸困難に陥っていた。笑い死にしそうなパートナーを傍らに、セルティは帝人に『暫く東京に居るのか?』と聞く。帝人は臨也を引き剥がしながら、こくりと頷いた。
「大きな仕事が片付きましたから。後は東京でやっても支障ないので」
『そうか!』
「ふふ、たくさん遊びましょうね、セルティさん」
『ああ、もちろん!そうだこの前帝人に似合いそうな服を見つけたんだ。今度それを見に行こう』
「なら僕はセルティさんに似合う服を探しますね」
『い、いや私は、その、首無しだから』
「女のひとは誰だってお洒落でいたいもの。そう教えてくれたのはセルティさんですよ」
『・・・そう、だったな。―――ありがとう、帝人』
「女の子の会話だねぇ。ああ照れてるセルティも可愛い!!」
「姉さんの方が可愛いに決まってんじゃん」
「(そうか、暫く居るのか・・・)」
作品名:最高無敵で最愛のお姉さま!@11/27追加 作家名:いの