二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

最高無敵で最愛のお姉さま!@11/27追加

INDEX|4ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

愛を知ったひと-過去-



最初は出会い頭にぶつかって、ふっとんだ彼女を助け起こしたのがきっかけだ。
転んだのは自分なのに謝ってきて、「お怪我はありませんか」とか聞くから、怪我すんならあんただろと思わず返してしまった。やばい泣かれるかもと反射的に思ったのは、自分が平和島静雄だからだ。けれど彼女はまっすぐに俺を見つめて、「丈夫なんですね。男の子だからかな」と笑った。何とも的外れな言葉と、久しく向けられてなかった優しい笑みを見て、どくんと心臓が跳ねた。





二度目の邂逅は屋上だった。
初めに見つけたのは俺で、彼女は俺を認めると笑みを浮かべて駆け寄って来た。「こんにちは」と告げる彼女に、俺は「・・・おう」としか言えなかった。屋上に用があったのかと聞けば、弟を探しているのだと言う。最近サボり癖が付いてきて、担任の先生直々に注意をしてくださいと言われたらしい。「自分で言えばいいだろ」とその教師に対して不平を言ったら、彼女は「確かに」と楽しそうに笑った。「でもまあこれも姉の役目だから」と彼女は言って、屋上を去った。その時自分たちは自己紹介すらしていないのだと気付いた。







三度目はノミ蟲と殺り合っていた時。

「いーざーやーてめぇそこに居るだけで空気を汚すんだよ!人間が好きってほざくんならその人間のために消えた方が身のためだっつうのッッ!!」
「はっ、その台詞静ちゃんに熨し付けて丁重にお返しするよ!化け物は化け物らしく相応しい場所に還れってね!!」
「てめぇこそ還れやぁぁぁッッ!!!」
片手でそこらにあった机を引っ掴んで投げる。一息付かずに今度は椅子。悉く避けられるなら避ける時間が無いぐらい投げてしまえばいい。たまにナイフが飛んできて、腕に刺さるが静雄にとっては微々たるものだ。むしろノミ蟲を殺れるのであれば疵の一つや二つ構いやしない。今日こそとどめを刺そうと、教卓を掲げた時、涼やかな声が戦場と化した教室に響いた。



「そこまでです、臨也さん」



声を張り上げたわけでもないのに、その声は静雄の耳にも、臨也の耳にもよく通った。名を呼ばれた臨也は片手にナイフを持ったまま呆然としており、多分今なら殺れただろうが、当の静雄も教卓を落として勢い良く声の方向を振り向く。原型を留めていない教室の入り口で、彼女が立っていた。








ナイフが身体に三か所ほど刺さっていた静雄の治療を優先する彼女に、不平不満を並びたてていた臨也を「そんなに元気なら先に戻ってていいですよ」という一声で黙らせる彼女は何と、折原臨也の姉だという。
「そういえば自己紹介してませんでしたね」と微笑み、彼女は折原帝人と名乗った。
「愚弟が本当にすみません。ナイフは学校に持ってくるなって何時も言い聞かせてるんですけど・・・」
「あ、いや」
「俺は静ちゃんみたいに周りのものをとっかえひっかえ投げつけるような野蛮な行為は出来ないしー。それにどうせ静ちゃんの反則筋肉に阻まれて大した怪我にもなんないんだからさ、別にいいじゃん」
「んだとてめぇ、」
「なら臨也さんが平和島さんにナイフを投げつけるごとに、僕が臨也さんにボールペン投げましょう」
「すみませんでしたっ」
「(あの臨也が謝った・・・!?)」
どこから出したのかボールペンをくるくる回している彼女、―――折原帝人に若干畏怖を感じながらも、普段の折原臨也では想像できない上下関係に静雄は感嘆した。
「お二人が盛大に暴れてくれたおかげで本日の授業は終了です。なので臨也さんは僕の教室から鞄を持ってきてください」
「えー!そしたら姉さんが静ちゃんと二人っきりになっちゃうじゃん。一緒に取りに行こうよー」
「 い ざ や さ ん ? 」
「行ってまいりまーす」
輝かしい笑顔の姉にお利口の返事をした臨也は音速の如くその場から姿を消した。ノミ蟲のあり得ない姿と『二人っきり』という単語に若干混乱していた静雄は、思わず「すげえな」と零す。
「ふふ、これでも姉ですから」
そう言って、帝人は静雄の腕に包帯を巻いていく。
包帯と同じ位白い手。おそらく静雄が少しでも力を込めて握れば潰してしまう小さな手だ。そんな手が静雄に臆することなく優しく触れてくる。するとじわじわと意図知れぬ感覚が腹の中から湧きあがるのを、静雄は顔を顰めることでやり過ごした。
「・・・・なあ、」
「はい?」
「あんた、ほんとにあいつと姉弟なのか?」
「ええ。・・・似てないでしょう?」
「ああ、・・・・って別に悪い意味じゃねぇぞっ。俺としては似てなくて良かったなと思うっていやいや違うすまん何言ってんだ俺」
静雄の言葉に帝人は大きな目をぱちりと瞬かせたと思うと、はじけるように笑った。
「あははっ、そんな事言われたの初めてです!」
軽やかな笑い声に静雄は怒りや羞恥よりも先に見惚れてしまった。しばらくして笑いが納まったのか、「すみません」と帝人は謝り、眸をふんわりと細めた。
「臨也はあの通り外見だけは良いですから。似てなくていいって言うひとは居ないんです。まあ、僕の顔はこの通り平凡ですからね」
「んなことねぇよ」
「へ、」
「あんたは可愛い、絶対」
「・・・・・・・・・・・・あ、」
「あ?」
「・・・・・・・・ありがとう、ございます?」
「・・・・・何で疑問形?」
「・・・・・何となく、です」
首を傾げる静雄に、帝人がぼそりと「そうか、この人天然か」と漏らしたが、幸いなことに静雄の耳には届かなかった。
この後、二人が知らずかもしだしていたどこかピンク色した空気は、去った時と同じように即行で戻って来た臨也の手によってぶち壊されてしまうことは語らずともわかるだろう。
弟の首根っこを捕まえたまま、「さようなら」と手を振った帝人に同じように降り返して、静雄は腕に巻かれた包帯を見つめた。
こんな怪我などすぐに治ってしまうけれど、なぜか包帯を解くのが惜しいと感じる自分を不思議に思いながらも、(悪くない)と静雄は笑った。
「折原、みかど、か」
この時の静雄はまだ気付かない。
初めての出会いから知らず知らず芽生えていた気持ちが、時を重ねるごとに膨れ上がるのを。
まだ、気付くことはなかった。







あの時確かに心臓が跳ねたんだ。
(可愛い、なんてほんとがらじゃねぇけど。確かにそう思った)