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ありえねぇ !! 4話目 後編

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こいつの好奇心は、いっぺん死なねーと、治んねーんじゃねーか? マジで。


溜息をつきつつ、病室の引き戸ドアに手をかけるが、たてつけが悪いらしくて開かねぇ。
イラっときてたし、ちょっと力を込めれば、金属がぶっ千切れる嫌な音がした。

「……あ、あれ?……今、鍵…壊し……て……」

女が背後で何か不思議そうな声を上げるが、構わずに帝人の首を肩に乗せたまま、病室にスタスタ入っていく。
(あ、ノック忘れた。まあ、いいか)

個室は大部屋と違い、ベッドの周囲に、カーテンの区切りとかは一切ない。
例えるのならビジネスホテルのシングルルームのような作りだ。
テレビと冷蔵庫、それにちょっとした四人がけの応接用のソファとテーブル、そしてシャワールームとトイレ、それに洗面台にカウンター机、クローゼットが作りつけで備わっている。

婦長が言っていたように、紀田は確かに居た。
ベッドは窓際にあり、生成り色のカーテンがしっかり引かれた薄暗い部屋の中、彼もベットに乗り上げて、帝人の体を背後から抱きかかえるようにして座っていた。

「……あ、悪い……」
帝人の上半身は素っ裸だった。どうやら寝巻きをひん剥いて裸にし、正臣が身体を拭いているようだ。

額に金髪が張り付いていて、随分と汗だくになっている様子が判る。
寝たきりの人間を世話するのは、本当に大変なのだ。看護相手が全く力が抜けているから、全体重を支えねばならない。
同じぐらいの体型だ。さぞかし重いだろう。
(甲斐甲斐しい奴じゃねーか、流石親代わりの親友だ)

「大変そうじゃねーか。着替えさせてんだろ? 手伝うぜ」

心の底から善意だった。
なのに、紀田は思いっきり嫌そうに眉を顰め、睨みつけてきやがる。
(何だぁ?)

歩きながら首を傾げると、ふいに青臭い独特の匂いが鼻についた。
それは思春期過ぎた男なら、誰でも知っている筈。

(……精液か……!? マジで!?……)

つかつかと大股でベットに近づき、二人の腰を覆っていた毛布をぱっと上に引っ張りあげる。
彼らの下半身は繋がっていた。
ぶっちゃけ、紀田はジーンズの前を寛げ、全裸の竜ヶ峰を己の胡坐に座らせ、背後から貫いていたのだ。

「……な……、てめぇ……、一体何しやがってる、……変態か、お前は……」

情けない事に、声が擦れて満足に出てこねぇ。
頭も真っ白で、正直、このまま振り上げた腕と毛布をどうしようかと悩む。
紀田を殴っちまったらきっと、繋がってる帝人もふっとぶんじゃねーかとか、兎に角頭の中はぐるぐるで。

「ちょっと、ちょっと、とりあえず、こっちへ早く!!」
「平和島さん、あんたは紀田の邪魔してるから!!」

美香と矢霧誠司が、二人がかりで自分を廊下へと引っ張り出す。
多分、呆然自失してなければ、簡単につまみ出される事は無かったと思う。

ぴしゃりと引き戸をきっちり閉め、そのままよろよろと廊下の壁に行き、背を凭れ掛けさせる。
本当はしゃがみこんでしまいたかったが、八つも年下のガキの前だ。
大人の意地で、あまりみっともない所は見せられねぇ。
そんな思いで踏みとどまる。

「……なぁ、今のアレ……、俺の目の錯覚?……」

「いえ、見たまんまだと思います」
相変わらず、矢霧誠司は冷静だ。

「お前らアレ見て、何とも思わねーのかよ?」、
「いいんです。愛があれば性別なんて関係ない」
「ああ? また訳のわからねぇ持論を唱えやがって。男同士だぞ? 竜ヶ峰は意識ねぇんだぞ? あれって……レ、レイプじゃねーか!!」

自分で言って青ざめる。
そうだ。無理やりとか、意識のねぇ奴を犯すのは犯罪だ!!
振り返って、再び病室に飛び込もうとした所を、またもや二人がかりで止められた。

「いいんです、あれは」
「よくねぇだろ!! 性犯罪だぞ!?」
「違いますってば。だって竜ヶ峰くんと紀田くんは、恋人同士ですし」
「はぁ!?」

美香の顔をガン見するが、彼女はとっても良い笑顔でのたまった。

「私、彼ら二人の家に盗聴器しかけてましたから。夜の秘め事もばっちり聞きました。紀田正臣と竜ヶ峰帝人は、真正のホモカップルです♪♪」

この女、別の意味でやべぇ。

「……ちょ、ちょっと待てよ。じゃ、園原……は?」
「杏里は、二人のカモフラージュ役でした♪」
「はぁ!?」
「ほら、ホモって世間体が悪いじゃないですか。だから二人に惚れられてる設定の女の子ですよ。正直他の女に妬まれるし、男も全然寄り付かなくなるから、随分と損な役回りなんですけどね。杏里ってそういうの引き受けがちだから。でも彼女は二人が大好きで、親友で、勿論関係も祝福してたんです♪」


もう、開いた口がふさがらない。
何だこの、怒涛の展開は?
ありえねぇだろが!?

「さぁ、お邪魔蟲はとっとと退散♪ 退散です♪」
「あ…、ああ……」

美香に促されて、あわあわと廊下を逆走しかけたが、数歩で止まる。
左手に、居るべき筈の首がねぇ。

(竜ヶ峰は?)


自分の混乱でいっぱいいっぱいになっていたから、今まで周囲の音が聞き取れなかったが、耳を澄ませば確かに、何時ものあいつの泣きべそが聞こえてくる。

《し~ずおさぁぁぁぁぁぁぁん!! たぁ~す~け~てぇぇぇぇぇぇ!! 待って!! お願い!! ひっく………、私を、置いていかないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!》

あの馬鹿。
どんくさすぎて、逃げ遅れやがった。
竜ヶ峰の個室に置いていかれた首が、えぐえぐ泣きながら、ドアにどかどかっと体当たりをしている。
そうとうテンパっているのは判る。
判るが……。

(俺にもう一度、このドアを開けろと?)
紀田が竜ヶ峰の体を使って、色々イヤラシイ行為を致してる真っ最中にか?

しかもここに、俺に愛をくどくど説きやがった男と、そいつが捕まえた【運命の女】もいるっつーのに?


(無理だ。無理無理。やっちまったら俺、どれだけ空気読めねぇ男になるんだよ!?)
出歯亀か痴漢か、こっちがまるで変質者扱いしゃねーか!!


「平和島さん、帰らないんですか?」

冷静な誠司が問いかけてくる。
だが、静雄はぴしりと石のように固まったまま、微動だにできなかった。

「……俺、……そう言えば紀田に、外せねぇ用事があんだよ。し……、仕事絡みで……」

苦しい言い訳だが、帝人の首幽霊を置きざりにして帰る訳にはいかない。
だが…どうやってあれを助けりゃいいんだ?

紀田がえっち行為を取りやめて、ドアを開けてくれるのをひたすら待つ……、なんて冗談じゃねぇぞぉぉぉぉぉぉ!!


《ぎゃあああああああ、白いのかけないで!! 私の顔がどろっどろ!! いやあああああああ、そんなの舐めるな馬鹿ぁぁぁ!!》


実況中継すんじゃねー!!


一瞬でいいから、ちらっとドアを開けられれば。
隙間……じゃ駄目か。人間の頭一つなら、三十……はきついか。余裕を見て五十か六十センチ、こっそり開ければ……って。
……駄目だ。無理。マジで勘弁してくれ。


(……すまねぇ、竜ヶ峰!!……俺にはやっぱできねぇ!! 何とか窓からでも何処からでもいいから逃げてこい!! 賢いお前ならきっとできる!!)

願いとは裏腹に、まず無駄だろう。